隊員の精神的な疲労は、極限に達している
代表曲の「とんぼ」「乾杯」「HOLD YOUR LAST CHANCE」を含む6曲を熱唱した。「乾杯」では、隊員たちが肩を組んで体を揺らし、長渕さんがマイクを向けて歌うように促すと大合唱に。「HOLD YOUR LAST CHANCE」では、歌詞にある「傷つけ打ちのめされてもはいあがる力がほしい」という言葉に静かに耳を傾けていた。
松島基地の広報担当者は「(震災後の)生活で隊員たちは、テレビを見る時間も、ゆっくり食事を取る時間も、もちろん音楽や文化的な時間もほとんど割くことのできない制限された生活をしている」と言う。
しかも、今最も力を入れている任務は、行方不明者の捜索だ。遺体を目にする毎日。士気も高いとはいえ、応援に駆けつけた隊員たちの精神的な疲労は、極限に達している。そうした中での長渕さんの生歌。隊員たちのモチベーションも上がったようだ。
最後の曲を前に長渕さんは、こうも話した。
「まだまだ(復興までに時間が)かかるかもしんないけどさ、みんなで力を合わせて、(隊員たちの)腕章に刻んでいる『絆』を大事にして、1つずつ1つずつ前へ前へ進んで行こうよ。オレも頑張るからみんなも一緒に頑張ろうよ」
長渕さんの慰問の様子は、ツイッターでも話題を集めた。「感動ものでした。自衛隊の皆さんへのねぎらい素晴らしい」「涙する一人一人の隊員の方達の顔を見て改めて彼らの激務と使命感に感謝し祈る気持ちになる」「自衛隊を慰問した長渕剛さんの歌を聴いた隊員が男泣きしていたのが印象的だった」といったものだ。
なお、長渕さんは4月3日、東日本大震災復興支援を願うラジオ番組を自らが企画し立ち上げ、FM青森、FM岩手など被災地の10放送局ではじめた。第1回の番組の冒頭、復興への思いをつづった散文詩「復興」を、ときおり声をつまらせ、怒りを込めながら読み上げた。詩は、「私たちのささやかな営み」を奪い去った海への「憎しみ」を露わにしつつも、現実に対峙する「覚悟」を力強く詠んでいる。