川崎市の阿部孝夫市長が津波で残ったがれきなどの処理を福島県側に申し出たことが、論議を呼んでいる。放射能に汚染されたゴミを持ち込むなと苦情も殺到しているが、市はそうしたゴミは処理しないと否定している。
がれき処理表明は、阿部孝夫市長が2011年4月7日、出身地の福島県に出向いたときだった。
4月中にも始まる見通しも報じられたが…
新聞各紙によると、阿部市長は県庁で佐藤雄平知事に会い、「津波で残ったがれきなど粗大ごみを川崎まで運び処理したい」と申し出た。佐藤知事は感謝の意を示したうえで、担当者に検討させるとした。川崎市は、阪神・淡路大震災などでがれきなどの災害廃棄物を貨物列車で運んで処理した実績があり、今回もその手法を活用すると説明したという。すでに調整を進め、4月中にも始まる見通しとも報じられた。
ところが、この報道に、市民らから「放射能に汚染されたゴミを持ってくるのか」と批判が高まり、同市に苦情が殺到する事態になった。子どもが心配だという女性からの声も多く、14日までに、2500件ほども寄せられている。
原子力の専門家からも、市の方針に異論が出ている。
中部大学の武田邦彦教授(資源材料工学)は、自らのブログで12日、「福島の瓦れきを川崎で処理するのに賛成できません」と明確に断言した。
その理由として、武田教授は、たとえ放射性物質の測定で基準内であっても、身の回りにこうした物質が多くある現在では、可能な限り接触しない方がいいからだと説明する。「空間、内部、食品、水などからの被曝の『足し算』をせざるを得ない時期」だというのだ。
川崎市は、空気中の放射線量は平常時に戻りつつあるが、それでも放射性物質が加わると問題だという。そのうえで、がれきなどは、運び出すのではなく、できるだけ原発近くで処理するのが望ましいとしている。