とかく、お固い印象の金融機関が「脱原発」を宣言した。東京都品川区に本店を構える信金業界大手の城南信用金庫がホームページに、「原発に頼らない安心できる社会へ」と題したメッセージを掲載し、話題となっている。
メッセージは2011年4月8日に掲載され、異例ともいえる「宣言」にネット上では「勇気ある行動だ」「応援する。預金する」「本気かよ。業界から爪弾きにされるんじゃない?」などの声があがっている。
LED照明やソーラーパネルを導入
「東京電力福島第一原子力発電所の事故は、我が国の未来に重大な影響を与えています。」ではじまるメッセージは、言葉は抑えているが「反原発」への思いが明確に伝わってくる内容だ。
「信用金庫という地域を預かる金融機関にとって、その地域を失いかねない事態の福島県を思うと、いま企業の姿勢として反原発の立場を明確にし、そのうえで省エネや節電に協力していくことが必要だと考えた。自らが言うべきことを言い、やるべきことをやれば、地域金融機関として地元企業の協力を引き出していくこともできると考えている」と、城南信用金庫の吉原毅理事長はそう説明する。
同信金はメッセージで、今後は省電力や省エネルギー、代替エネルギーの開発利用に「少しでも貢献する」とし、その具体的な取り組みとして、徹底した節電運動の実施や冷暖房の設定温度の見直し、省電力型設備の導入や断熱工事の施工、緑化工事の推進、ソーラーパネルの設置にLED照明への切り替え、燃料電池や自家発電装置の導入など――をあげている。
すでに本店のロビーやウインドウディスプレイの照明や、エレベーターの節電などで通常の電力量の約3割をカットできた。LED照明の切り替えや、大型店でのソーラーパネルの導入も、「できるところから順次実施していく」(吉原理事長)という。
城南信金によると、営業区域内の経営者にも被災地の出身者は少なくなく、「反原発」宣言に賛同した福島県出身の工場経営者が、同信金が呼びかけている義援金に100万円を寄付したり、震災直後から取り扱っている「震災ボランティア預金」が発売後1か月の残高で2億円超を集めたりと、共感する人は少なくないようだ。
「草の根金融」でユニークな取り組み
城南信用金庫といえば、「小原鐵学」といわれ、担保主義の銀行経営を嫌って「草の根金融」を説いた故・小原鐵五郎氏の経営を旨としてきた。本店に入ると事務室までの廊下は節電で薄暗く、ふだんから経費節減は徹底している。
その一方で、宝くじ付定期預金の火付け役として「懸賞金付き定期預金 スーパードリーム」をいち早く発売するなど、ユニークな取り組みで地域に根ざしてきた。
震災支援も、被災地の金融機関への「支援金」や「見舞金」の振り込み手数料の無料化や、被災者への物資の支援にも積極的に取り組んでいる。
吉原理事長は、「ストップ原発も、信用金庫と同じ草の根運動で広がっていくものと考えている。メッセージに共感してもらえて、地元企業に省エネや節電運動が広がっていけばいい。もちろん、そのための融資には積極的に応じるし、こちらからも提案していきたい」と話している。