東日本大震災「過去の歴史から想定できた」
テレビ番組でもゲラー教授は、政府が「東海地震」の危険性を強調するあまり、それ以外の地域の人々は、「自分が住む場所は地震なんて起きないだろう」と思い込むのが危ないと警鐘を鳴らす。
むしろ「日本全国どこでも、地震の危険性はある」というのが同教授の考えであり、東日本大震災は決して想定外ではなかったという。今回の震災で壊滅的な被害を受けた三陸沿岸は、歴史的にも頻繁に大規模な地震や津波が起きている点を説明。1933年の昭和三陸地震では死者が1500人以上に達したほか、1896年に発生した地震で「高さ38メートルにも及ぶ津波に襲われて2万2000人以上が亡くなった」という。さらに歴史をさかのぼって、平安時代にあたる869年の「貞観津波」についても、論文で触れている。
「地震発生の場所や時間を特定することはできないが、世界各地の地震活動と、東北での過去の記録に基づいて地震発生の危険度を予測したのであれば、3月11日の東日本大震災は『想定』できたに違いない」
と、同教授は主張する。
東海地震に関しては、現在も気象庁が該当地域の地殻変動の様子を観測し、頻繁に結果を公表している。これは「大規模地震対策特別措置法」(大震法)に基づいているのだが、そもそも地震の予知は不可能と考える同教授は、東海地震の予測などナンセンスとして「大震法の廃止」を訴える。そのうえで、地震研究は官僚主導ではなく、物理学に基づいて日本のトップ研究者が進めていくべきだと論文を締めくくっている。