東日本大震災の発生から1か月経つが、大小の余震はまだ続いている。いつまで続くのか。ネット上では古典文学の『方丈記』に記された大地震の記述に注目が集まっているが、専門家でも余震がいつまで続くかは「わからない」というのが正直なところらしい。
――行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にはあらず。
学生時代に必ず暗唱させられる、この書き出しで、世の中の無常観を書いた鴨長明の随筆『方丈記』。京の都で起きた火災(1177年)、竜巻(1180年)、飢饉(1181~1182年)など当時起きた天変地異が詳しく書かれている。
『方丈記』には3か月間余震の記述
ネット上で話題になっているのが、随筆の中にある大地震(文治京都地震、マグニチュード7.4)の記述だ。元暦2年(1185年)、都で起きた大地震で、山は崩れて河を埋め、津波が押しよせ、土は裂け水があふれ出し、大きな岩が割れて谷に転がり落ちたなどの惨状が記録されている。余震に関しては次のようにある。
「かく、おびただしく震(ふ)ることは、しばしにて止みにしかども、そのなごりしばしは絶えず。世の常、驚くほどの地震、二、三十度震らぬ日はなし。十日・二十日過ぎにしかば、やうやう間遠になりて、或いは四、五度・二、三度、もしは一日まぜ、二、三日に一度など、おほかたそのなごり、三月ばかりや侍りけん」
本震はしばらくしてやんだが余震は続いた。1日に20~30回あったのが、10~20日ほど過ぎたら、1日に4~5回、2~3回と次第に減っていった。だいたい3か月は余震があったという意味だ。
この余震の記述は、ツイッターを中心に話題となり、書き込みには「【方丈記】のとおりだと、後二ヶ月も余震が続くのかぁ」「一ヶ月たっても余震が続くのは昔から大地震のたびに日本ではあったことといえる」「自然界ではあたり前のことなのかもしれません」などとあった。
「長期的な予測は難しい」
気象庁のwebサイトによると、本震直後は余震が頻発するが、本震発生から10日目で10分の1、100日目で100分の1に減少するとある。中越地震(2004年10月23日発生、M6.8)や能登半島地震(2007年3月25日発生、M6.9)の例では、震度1以上を観測した地震は、直後の1週間はそれぞれ592回、322回を数えたが、2~3か月も経つと20回程度に減っている。だが、東日本大震災では、本震により地殻が動いたことから、新たな余震を誘発している可能性も指摘されている。
では、今度の場合、余震はいつまで続くのか。独立行政法人産業技術総合研究所、活断層・地震研究センター(茨城県つくば市)の桑原保人・副センター長は「わからないとしか言えません」。M9.0の大地震は世界でもあまり例を見ないからだ。前述の地震とはマグニチュードで2の違いがある。直近では2004年のスマトラ島沖大地震がM 9.3。スマトラ島沖地震ではその後も、周辺地域で何度かM 7.0を超える地震が発生した経緯があり、注意が必要だという。
独立行政法人防災科学技術研究所(茨城県つくば市)も取材に対し、「(余震の)長期的な予測は難しい」と話した。震度(揺れの程度)については、震源地が陸に近い場所か、そうでないかでも異なるという。今後は「時間の経過により発生の頻度は低くなるものだが、比較的大きい余震が起きたあと、それに対する余震がくる可能性もある。いずれにしても今後も警戒が必要だ」と話している。