綱渡りの状態が続く福島第1原発対策を支援する名目で、世界最大の原子力企業、仏アレバと米ゼネラル・エレクトリック(GE)首脳が次々に来日した。アレバは仏政府など政府関連機関が9割の株を持つ事実上の国営会社だけあって、サルコジ仏大統領もわざわざ東京にやってきた。
人道的な支援という目的はもちろんだが、真な狙いは廃炉をはじめとする今後の「フクシマ」の商機にかかわろうとすることに他ならない。世界に広がっていた「原子力ルネサンス」のムードを吹き飛ばした今回の事故への不安を早期に火消ししようとの意味もある。
プルトニウムの取り扱いはフランスの得意分野
動きが早かったのはアレバだった。「フクシマ」の建設には直接かかわっていなかったが、東日本大震災発生から1週間以内に、提携先の三菱重工業を通じて、東京電力や日本政府に具体的な支援策を申し出たとされる。さらには、2011年3月末のアンヌ・ロベルジョンCEO(最高経営責任者)とサルコジ大統領の来日に合わせ、フランスの放射性廃棄物処理の専門家も来日し、プルトニウムを含む放射性物質漏えいの危機管理を支援することになった。特にプルトニウムの取り扱いはフランスの得意分野であり、日本にとっても心強いのは確かだ。
アレバ首脳の訪日について三菱重工の幹部は「目的は廃炉ビジネス」と明確に指摘する。アレバは核燃料から原子炉の製造まで手がける世界最大の原子力総合企業だ。
フランス政府が、欧州での原発受注が一巡した後、日米企業と互角に戦うため2001年、原子炉製造の「フラマトム」と核燃料を製造する「コジェマ」の経営統合を後押しした経緯がある会社。これまでに1979年の米スリーマイル島原発の事故処理を手がけたほか、1986年のチェルノブイリ原発事故では廃炉の作業工程を受注するなど、世界を見渡しても原発事故処理では右に出る企業はないと言っていい。
一方、「フクシマ」は第1、第2ともにGEが開発した「沸騰水型(BWR)」と呼ばれる原発でもある。なかでもGEは「今最も危険な状態」(政府関係者)と言われる第1原発の中の1号機の原子炉製造などを担当した。