孫社長が「ネット規制」抗議 ツイッター一時停止に異論

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   ソフトバンクの孫正義社長が、ネット規制が強化されるとして、ツイッターを3日間止める抗議行動を行い、論議になっている。これに対し、ウイルス作成罪などの関連法案を国会に提出した法務省では、「強制捜査には令状が必要で、規制強化の批判は当たらない」と反論している。真相はどうなのか。

   きっかけは、ジャーナリストの上杉隆さんがツイッター上で発言したことだ。

「ハンガーストライキみたいなもんです」

つぶやきがまた波紋
つぶやきがまた波紋

   上杉さんは、週刊ポスト2011年4月11日発売号が、菅政権は震災のドサクサの中で「ネット規制強化法案」を閣議決定したと報じたことに言及。「火事場泥棒。言論の自由への挑戦。情報暗黒内閣の正体露に」と痛烈に批判した。

   これに対し、孫正義社長は同日、この発言を引用して「皆さんどう思いますか」とツイッターで反応を確かめた後、いきなりこう切り出したのだ。

「本件に抗議して、今から3日間tweetやめます。 ハンガーストライキみたいなもんです」

   上杉さんも、これにならって、「御意賛同、追随決行」とスト入りした。

   ポストの記事では、関連法案を「コンピュータ監視法案」と呼び、捜査当局が令状なくプロバイダに特定利用者の通信記録保全を要請できるものだとしている。そして、「やろうと思えば誰の通信記録でも安易に取得されてしまう」との専門家の話を付けた。さらに、警察庁は歩調を合わせるように、名誉毀損罪などにつながるデマ規制強化に乗り出したとしている。

   ネット上では、孫社長らの抗議行動に共感する声もある。ツイッターでは、「メールの内容までとはプライバシーもない」「なんだか言論の自由が無くなっていくな」といったつぶやきが出た。

   しかし、上杉さんが引用したポストの記事には、事実誤認もあるのではとの指摘も出ている。

   政府が関連法案を閣議決定したのは、3月11日の午前中で、震災前だったことがその1つだ。また、日本にはなかったコンピューターウイルス作成罪を刑法などに盛り込むのが法案の狙いという通信社記事などを引いて、ネット規制強化とは言えないのではないかとの声もある。ジャーナリストの佐々木俊尚さんはこの見方を支持しており、切込隊長ことブロガーの山本一郎さんは、「平たく言うと誤報」とまで言っている。

法務省「規制強化の批判は当たらない」

   孫正義社長らの抗議行動は、逆に法案への誤解を与えるある種のデマになるのでは、との見方も出ているようだ。

   これに対し、孫社長は、そうした見方については知っていることを示唆しながら、スト前にツイッターでこうつぶやいた。

「私なんて間違えてデマRTした事何度もある。これからは、確認取るのも大変? これから何回逮捕されるのか? 確証ない時は毎回????」

   さらに、上杉隆さんも、「デマではないのでは」と反論している。「日付ではなく法案の中身の問題。閣議決定は法制化への一歩。民主主義に逆行するこの種の決定とは、断じて戦わなければならない」というのだ。

   ネット規制強化だという批判については、国はどう考えるのか。

   法務省の刑事法制管理官室では、関連法案にはウイルス作成罪整備などの狙いがあるとして、「批判は当たらないと考えています」と反論する。孫社長の抗議ストについては、「個人のことはコメントできません」としながらも、「コンピューターの監視を強めるのではなく、むしろ保護するものだと考えています」と主張。関連法案については、「サイバー刑法」などと呼んでいるという。

   利用者の通信記録保全については、名誉毀損行為や児童ポルノ公開などのサイバー犯罪を摘発するために刑事手続きとして整備することにしたとする。一方、捜査当局が通信事業者に対して暫定的に通信記録を消さないよう求めることができることは認めた。しかし、拒否しても罰則はなく、保全した通信記録についても、当局が取得するには令状が必要になるという。

   警察庁のデマ規制強化については、同室では「まったく関係はありません」と言っている。孫社長はツイッターで、政府は法案を通してしまったと英語でつぶやいているが、国会に提出されただけでまだ審議も始まっていないという。

   こうした反論にどう考えるかについて、ソフトバンクの広報室では、「孫が個人としてツイッターで発言したことですので、会社としてのコメントは特にありません」と答えるのみだった。

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