福島第1原子力発電所の危機的状況が続く中、故・忌野清志郎さんが1980年代に歌った反原発ソング「サマータイム・ブルース」がにわかに注目を集めている。YouTubeでの再生回数が30万を突破。曲を収録したアルバムも売れ、アマゾンランキングでも上位に入っている。
曲は1988年に発表。米ロック歌手、エディー・コクランの同名曲に日本語の歌詞をつけてカバーしたものだ。
「原子力は要らねぇ 危ねぇ」
反原発をテーマにした曲で、「東海地震もそこまで来てる だけどもまだまだ増えていく 原子力発電所が建っていく」「寒い冬がそこまで来てる あんたもこのごろ抜け毛が多い」「原子力は要らねぇ 危ねぇ」とかなりストレートな内容だ。
収録アルバム「COVERS」は当初東芝EMIから出る予定だったが、突然中止。新聞に「素晴らしすぎて発売できません」という広告が掲載され、原子力産業に携わる親会社からの圧力がかかったのではないかと噂された。その後、同年に別のレコード会社から発売されている。
今回の福島第1原子力発電所の事故後、急速に注目を集めており、YouTubeにアップされているライブ動画は2011年4月13日現在、再生回数が約34万回。「正座して聴いてます」「忌野さんがご存命なら今度の原発事故でどんなコメントをしてたでしょうか」といったコメントが寄せられている。
旧譜にも関わらずアマゾンのロック部門14位
アルバム「COVERS」も売れているようで、アマゾンでは4月13日午前現在、「J-POP>フォーク・ニューミュージック」で4位。「J-POP>ロック」でも14位に入っている。ロック部門で、上位に入っているものは殆ど新譜なので、20年以上前に発売された作品が14位というのはかなり異例だ。都内の大手CDチェーンでも一時売り切れになったという。
音楽評論家の加藤普さんは、
「発売された1988年は経済がよくて日本全体がイケイケだった時期。電力の需要も爆発的に伸びていて、『原発も仕方ないかな』という雰囲気でした。歌詞の中に『原発という言い方も改めましょう』『正確に原子力発電所と呼ぼうではありませんか』というのがありますが、『原発』という言葉にすることで原子力の怖さが薄れるのを心配していたのでしょう。2009年に亡くなってしまいましたが、恐らく今生きていたら、何も言わないで、自転車で被災地を回ってたんじゃないでしょうか。彼はそういう人です」
と話している。