屋根の上の遊覧船「はまゆり」の運命【岩手・大槌発】

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(写真は造船所再建の意欲を語る川端社長(左)。後方がはまゆり、手前にあるのはどこからか流れ着いた木製の臼=大槌湾の近くで)


(12日大槌発=ゆいっこ花巻支部;増子義久)

   今回の大災害を象徴する光景として一躍脚光を浴びた「屋根の上の遊覧船」―。その前に広がる瓦礫(がれき)の山からバラバラになった機械類を拾い集める男たちがいる。大槌湾を拠点とする船舶の修理点検を一手に引き受けてきた「岩手造船所」の川端義男社長(69)とその従業員たち。この遊覧船は釜石市が所有する、三陸海岸周遊の「はまゆり」(200人乗り)で、定期検査のため陸(おか)に巻き上げた3時間後に津波にさらわれた。

   「2回目の波が来た時、遊覧船は防波堤を乗り越えて流され、2階建ての民宿の屋根にストンと引っかかった。高台に難を逃れたが、まるでスロ-モ-ションビデオを見ているみたいだった」と川端さん。明治時代から続く造船所の4代目。余りの惨状に一時は再建をあきらめようと思った。でも、ウソのように穏やかさを取り戻した紺碧(こんぺき)の海を見ているうちにムラムラと執念がわき起こってきた。「この海を生き返らせるためにはまず、魚を取るための漁船にいのちを吹き込まなくては…。それこそがオレに課せられた使命だ」

   当時、修理などのために係留されていた船舶は遊覧船のほか、定置網船やサンマ船など11隻。そのほとんどが行方不明になったり、陸(おか)に打ち上げられたりした。北海道・根室港所属の漁船も無残な姿をさらけ出している。当面は造船所の跡地にプレハブ小屋を建て、使用可能な巻き上げ機などを使って、小型漁船の修理などを手がけるつもりでいる。

   川端さんには管理栄養士の理香さん(36)と鍼灸師の利枝さん(30)の二人のお嬢さんがいる。二人とも東京に住んでいるが、ふるさとの惨状にいたたまれなくなって2回も救援に駆け付けた。「はまゆりのあの姿はショックだった。何とかして父の支えになってやれないかと思って…」

   大槌湾の定置網にかかるサケは美味な味で知られている。秋口には生まれ故郷の大槌にきっと戻ってくると地元の漁師たちは信じている。「それまでに必ず定置網船を元の姿に蘇らせてみせる」。川端さんと従業員、それに二人の娘さんを含めた総がかりの「造船所再建」計画が今、スタ-トしようとしている。これに共鳴した「ゆいっこ」花巻支部から13日、瓦礫撤去ボランティア10人が応援に駆けつける。


=注=「はまゆり」は釜石市が約4億円で建造。10年以上にわたって、三陸海岸の周遊を続けてきた観光船。損傷はほとんどないが、200トンもの重量があるために海への移動は困難と判断。近く解体処分されることになった。


「はまゆり」の雄姿
「はまゆり」の雄姿

ゆいっこは民間有志による復興支援組織です。被災住民を受け入れる内陸部の後方支援グル―プとして、救援物資やボランティアの受け入れ、身の回りのお世話、被災地との連絡調整、傾聴など精神面のケアなど行政を補完する役割を担っていきたいと考えています。
岩手県北上市に本部を置き、盛岡、花巻など内陸部の主要都市に順次、支部組織を設置する予定です。私たちはお互いの顔が見える息の長い支援を目指しています。もう、いても立ってもいられない───そんな思いを抱く多くの人々の支援参加をお待ちしています。
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