政府や東電に厳しい指摘をしたとして、NHKの水野倫之解説委員が出番を減らされた――。民放のテレビ番組でこんな爆弾発言があり、ネット上で波紋を呼んでいる。しかし、NHKの広報部では、「そういう話は聞いていません」と言っている。
爆弾発言をしたのは、政治解説で知られる白鴎大学教授の福岡政行さんだ。
政府や東電に厳しい指摘をしたため?
テレ朝系で2011年4月11日夜放送の「たけしのTVタックル」で、原発事故が終息する状態が話題になったときのこと。福岡さんは、政府や東電に対する批判についてこう漏らしたのだ。
「あんまり厳しく言うと、NHKの水野なんとか委員のように出番が少なくなっちゃった…と言っちゃいけないんですが、生番組だから言いました」
これに対し、政治評論家の三宅久之さんが「あなたはね、ちょっと余計なことが多すぎるよ」と口を挟む。同時にスタジオから笑い声が上がったが、福岡さんは、そのまま原発事故の話を続けた。
ネット上では、福岡さんのこの話が話題になり、様々に憶測する向きが出た。
「水野も、枝野の『ただちに影響はない』に噛みついてたからな」「危ない危ない、深刻深刻いいまくってたもん」「『悪戯に国民の不安を煽った』などと、政府関係者からクレームが入ったのではないか」…
こうした2ちゃんねるの書き込みは、まとめブログ「アカ速」などにまとめられている。
日刊ゲンダイの3月28日発売号によると、水野解説委員は、前日放送の震災特集番組で、政府や東電に厳しい指摘を連発した。
「事態を後追いしているようにしか見えない」「この事故がもっと深刻だと考えられなかったのか」「6機同時進行だから、レベル5のスリーマイルを上回って6といっていい」
こうした物言いで出番が減らされたというのは、どこまで本当なのか。
NHK「そういう話は聞いていません」
NHKの広報部では、政府・東電批判による出演への影響について、「そういう話は聞いていません」と取材に回答した。福岡政行さんの発言については、「他局の放送でのことですし、文脈が分かりませんので、コメントすることはございません」と言っている。
一方、ネット上では、干されたのは水野倫之解説委員だけではないとの声が上がっている。科学文化部の山崎淑行記者も、出番が減らされているのではという憶測が出ているのだ。
山崎記者は、福島第1原発1号機で爆発があった2011年3月12日、政府や東電は適宜情報を出しているものの、マスメディアが重大な情報を入手できていないと明かした。そして、静かに怒りをにじませるような表情でこう言ったのだ。
「ここはもう徹底的に糾弾されるべきです…」
そして、爆発や放射線量を考えると、原子炉、さらに格納容器が破損した可能性が非常に高いと大胆に予言。放射性物質が大気中に大量に出ていることが考えられると、その後の展開まで見通していた。
2ちゃんなどでは、山崎記者がその発言で出番が減らされ、代わりに出番が増えた水野解説委員も今度は同じ目に遭っているのでは、とうがった見方もある。その一方で、多忙のため2人が交代で勤務するシフトを組んだとの週刊誌報道や、現在は出番が回ってきていることから、干されたわけではないのではとの指摘も出ている。
NHKの広報部では、「ネット上の話は把握していませんので、コメントのしようがありません。そのときの必要性に応じてやっています」としており、政府・東電批判から2人の出番を減らしたという事実は全面的に否定している。