シャープの液晶生産の主力工場であるグリーンフロント堺工場が、東日本震災の影響を受けて資材調達が詰まり、11年4月上旬から約1ヶ月間、操業休止を余儀なくされている。シャープ本社広報は、5月の連休明けには再開できる見込みだといっている。
堺工場は07年に計画され、09年10月から創業を開始した。新日鉄が保有していた土地を買収して建設されたが、特徴は、液晶生産に必要な関連工場のほとんどを南北1キロ、東西1.6キロの敷地内に建設、コンビナートのように一貫生産している点だ。
ガラスを生産する旭硝子、コーニングジャパン、カラーフィルターの大日本印刷、凸版印刷のほか、エネルギー供給の関西電力、大阪ガス、下水再生の栗田工業など19社が、真ん中に立地したシャープ工場につながっている。
「亀山」後を背負う大型パネル生産の最新拠点
シャープの液晶生産は三重県の亀山工場が02年に稼動し、世界最新鋭の一貫生産工場として有名だったが、主力の座は堺工場に移っている。工場面積は亀山の3.8倍。シャープの投資額は約5000億円、コンビナート全体で約1兆円という巨大プロジェクトである。
シャープの液晶生産額は10年度が1兆600億円、前年より20%増えている、堺工場での生産額は公表しないが、大型モニターの多くは堺で生産されているので、高い比率を堺が占めていると見られる。
堺工場が生産しているのは第10世代と呼ばれる2メートル88センチ×3メートル13センチのマザーガラスパネル。
工業用ガスの供給不足でコンビナート全体が止まる
パネル生産のシャープ工場とガラスやフィルム素材を生産して納品する関連工場はベルトコンベアで直接つながっていた。棟間輸送と呼ばれ、通常だとトラックによる構内輸送がゼロになっている。エネルギーの供給はコンビナート内の施設から一括して行われることにより効率化されている。関連工場を別々に作るのに比較して、約35%のエネルギー省エネが図られたとシャープは説明している。
今回の操業休止は、ここで使用する工業用のガスの供給がストップしたためだという。コンビナートへのガス供給は敷地内に立地する大阪ガスが担当しているが、不足しているのは特殊な工業ガス。せっかくの19社一貫生産が、液晶を作動させる回路に必要なガスの不足でコンビナート全体が休止に追い込まれるという皮肉な状態となった。
シャープ広報によると、製品の在庫があるので1ヶ月の操業休止はマーケットに迷惑をかけないとしている。