大相撲観戦のいわば「特等席」、人気の「升席」(桟敷席)を「見直してはどうか」と、大相撲新生委員会の島村宜伸委員長(元文科相)が提案した。
一方、日本相撲協会は2011年3月場所に続き、5月場所の中止を決めた。代わりに、「技能審査場所」を開催。入場無料にする方針ではあるが、升席の扱いなど具体的なことは決めていない。
4人1席で4万円前後
升席は、相撲ファンであれば一度は座ってみたい席だ。観戦チケットは4人升(4人で1席)で4万円前後。プレイガイドやインターネットでも購入できるが、「よい席」は東京・両国国技館前に20軒、大阪に8件ある「お茶屋」と呼ばれる案内所がほぼ独占しているとされる。
お茶屋は観戦チケットの予約受付や販売のほか、観戦当日には観客を升席に案内したり、飲み物や弁当を席に運んでくれたり、さらには観戦みやげや大相撲グッズを製造、販売する。チケット代は席料だけだから、優雅に観戦したいのであれば、飲み物や弁当の手配をお茶屋に頼むしかないわけだ。
お茶屋の女将や主人は関取に縁がある人も少なくなく、じつはこうした関取や日本相撲協会とお茶屋の「癒着」が、かつては暴力団関係者に升席を融通するなどの不適切な関係に進展したのでは、との指摘もある。
島村宜伸委員長は、「(升席を廃止するとか、お茶屋との関係をどうするかは)日本相撲協会の経営の問題。協会がクリーンになることはもちろんだし、それは想像以上のスピードでできていると感じている。われわれの立場は『観客の側に向いた改革』の必要性を提案していくことだ」という。
見直し、構造上の問題から「簡単ではない」
島村宜伸委員長は「升席見直し」について、「升席は長時間観ていると足がしびれるなど、高齢者にやさしくない。大相撲が高齢者に人気があるスポーツというのであれば、そういったところから見直さなければダメだ」と話している。
たしかに、1.5メートル四方、しかも板敷きに大人4人が座るのは高齢者でなくともつらいかもしれない。
「廃止などとは言っていないが、配慮にかけているのではないか。椅子席であってもよいということだ」と、島村委員長はいう。
一方、日本相撲協会は「升席の見直し」について、「いまのところ、具体的な話は聞いていません」と話している。たとえ検討がはじまっても、「升席は4人1席の構造になっていることもあり、見直すといってもすぐにできるようなことではありません」といい、構造上の問題から簡単ではないとしている。