福島第1原発の事故で放射性物質が大気中や海に拡散している問題で、周辺諸国から批判の声が加速している。中でも韓国国内では、「日本に損害賠償を請求すべきだ」との声が公然と上がっている。北朝鮮の国営メディアからは、「制裁」という単語すら登場している。
福島第1原発の汚染水の放出をめぐっては、事前通報がなかったとして「無責任な日本に批判」(4月5日、朝鮮日報)といった批判の声があがっていた。
「被害が確認されれば、法的措置とることができる」
その後も事態は好転せず、放射性物質の拡散が続いており、韓国では学校が休校になるなどの影響も出ている。このことから、日本に賠償を求める声があがっている。
韓国の「ソウル新聞」は2011年4月11日、
「事前災害で予期できない被害だったにしても、その後の政府のずさんな管理と、危険性を事前に告知する義務に違反したという点で、日本政府は責任を免れない」
と、その背景を説明している。具体的な動きとしては、44の環境市民団体でつくる「日本原発事故緊急対策委員会」は、4月10日に
「政府レベルで韓国は日本に被害の賠償を要求しなければならない」
「被害規模を算定するために、日本政府は正確で客観的なデータを提供しなければならない」
と主張。外交通商部の当局者も、
「放射能による被害が確認されれば、損害賠償などの法的措置をとることができる」
と話したといい、賠償請求を視野に入れている模様だ。
ニュースサイト「マネートゥデイ」でも4月10日、「韓国も補償受けることができるのか?」との記事を掲載。弁護士が、
「東京電力の故意や過失が認められても、韓国での損害賠償を受けることは現実的に難しそう」
との見通しを披露する一方、政府関係者は、汚染水の放出について、
「事前注意義務や国際協力義務など、条約に違反したかどうかについて議論の余地がある」
とコメントしている。
北朝鮮「日本制裁は誰にも明白な事実」
お隣の北朝鮮も、日本側を激しく批判している。国営朝鮮中央通信は4月8日に配信した記事の中で、日本が制裁措置の延長を決めたことを批判。その上で、原発事故を引き合いに出し、
「原子力発電所に対する安全管理をまともにしなくて国際社会の憂慮を増大させている日本政府が、われわれの平和的な核活動に言いがかりをつけたこと自体が言語道断である」
と指摘。さらに、こう述べた。
「特に、日本政府は事前通報もせず、膨大な量の放射性汚染水を故意に海に流して周辺国の人々の生命安全に現実的に危険を与えていることによって抗議と糾弾を受けている。それゆえ、制裁は当然、日本が受けなければならないというのが今日、誰にも明白な事実となっている」
と「制裁」という言葉を使ってまで日本批判を展開している。