深刻な事態が続く福島第1原発を巡り、核分裂の連鎖反応を起こす「再臨界」が起きているのではないか、という疑念が未だにくすぶっている。とりわけ、1号機が問題だとされ、放射線量の急上昇が不安を招いている。
毎時100シーベルト、全身に浴びれば人が即死しかねないほどの放射線量が2011年4月8日に1号機の原子炉格納容器内から検出された。前日が31.7シーベルトだったため、ほぼ3倍強に急増したことになる。それ以前の数日は、線量も安定していたことから、何か異変が起きているのでは、というわけだ。
ビデオニュース・ドットコムの9日付記事によると、京大原子炉実験所の小出裕章助教は、同社の取材に対し、炉内の温度と圧力も上昇していることから、炉内で再臨界が起きている可能性が高いと指摘した。
ネット上では様々な憶測呼ぶ
それをうかがわせるものとして、小出助教は、塩素が中性子に反応して生まれる「塩素38」という物質が原子炉内で発見されたことを挙げる。つまり、再臨界の特徴とされる中性子が発生していたことになるからだ。塩素38は、1号機の冷却用に使われた海水に含まれていた。アメリカの科学者も、塩素38を再臨界の根拠にしていたと報じられている。
さらに、注水しても発熱がいっこうに収まらないこと、半減期の短いヨウ素131がまだ高濃度で観測されていることなどから、一部では再臨界を疑う専門家も出ている。
もっとも、東京電力は2011年4月9日、原発1号機で原子炉の放射線検出器や温度計が故障したことを明らかにした。7日にあった最大震度6強の余震が原因だという。
つまり、放射線量の急激な上昇は、故障のためということらしい。東電では、1号機に爆発を防ぐための高濃度窒素を注入しており、周辺の放射線量の測定結果やその後圧力が下がったことなどから「原子炉は安定している」と言っている。
とはいえ、ネット上では、高い放射能で計器が振り切れたのではないか、などの憶測がくすぶっている。