避難指示などの出ている福島第1原子力発電所から30キロ圏内で、ペットや家畜が野放し状態になっている。犬は群れをなして野犬化し、道路を牛が闊歩している。
ネット上でニュース動画を配信している「ビデオニュース・ドットコム」が2011年4月6日、30キロ圏内の様子を撮影した動画を公開した。
ストレスで凶暴化する犬も
タイトルは「原発避難区域は犬や牛の群れが闊歩する無法地帯に」。3日に撮影されたもので、地震で損傷した道路を福島第1原発向け北上。その様子を車中から映している。
原発から21キロ、福島県双葉郡楢葉町近辺で歩道を歩く4頭の犬の群れと遭遇する。首輪を付け、柴犬やラブラドール・レトリーバーのような犬もいる。元は皆飼い犬だったのだろう。原発から2キロ地点でも首輪を付けたブルテリアが道路の真ん中に登場。車から降りた撮影者に近づき、魚肉ソーセージを貰っている。
撮影した日本ビデオニュース社の神保哲生さんによると、現在30キロ圏内はほぼ無人状態。1~2時間の取材中、すれ違った車も数台だけだという。
ある動物愛護団体によると、20キロ圏内の避難指示が出た地域では、当初「1日2日で帰れる」と思われていた。そのため、多くの飼い主が犬を繋いだ状態で避難したが、長引くにつれ、時折戻ってきた近所の人が放してあげているのだという。
「うちの団体は被ばく覚悟で10キロ圏内にも入って犬や猫の救出を行っています。繋がれた状態の犬は死んでしまっていることも多く、報告を受けた飼い主さんが泣き崩れることもありました。近所の方がエサをまとめて撒いていくので、生きている犬もいるのですが、中にはストレスで凶暴化する子もいて、犬も心のケアが課題です」と話す。
放たれた牛、「生きててくれれば」
さらに異様なのが、野放し状態になった牛だ。ビデオニュースの動画では、原発から1.8キロ地点で4~5頭の黒い牛の群れが出てきて、道路を横断。付近の草を食べている。
福島県畜産農業共同組合連合会によると、30キロ圏内には乳牛や和牛などが1万頭ほどいる。避難する際に「繋がれたままだとかわいそう」と外に放した畜産農家があるという。
「家族同様の思いで牛を育てている畜産農家もあります。青草や生け垣を食べているみたいですが、福島はまだ寒いですし、そんなにはありません。農家は『なんとか生きていてくれれば』という思いです。20キロ圏内に戻ってエサをやっている農家もいます」
と話す。また、20キロ圏内は「避難指示」なので国の補償対象になったとしても、20キロから30キロ圏の「自主避難」では分からない。
「死んだまま放置される牛もいて、腐敗が進めば伝染病も心配。畜産農家は皆怒っています。放射性物質が出たら売ることは出来ませんし、国と東電は責任を認めて、補償するとはっきりさせなければいけません」