節電対策としてサマータイム制度の導入などが検討されるなか、夏の電力不足は追加の節電効果を見込んでも360万キロワットの供給力不足になることが、野村総合研究所の調べでわかった。2011年4月8日に発表した。
東京電力が先に試算した11年夏の需要見込みは5500万キロワット。このうち火力発電所の再稼働などでやり繰りで確保できる供給力は4650万キロワットで、850万キロワットの供給力が不足する。
同総研がこれをベースに試算しなおしたところ、大手企業などの総量規制(契約電力の引き下げ)や輪番操業、節電の推奨などによって得られる追加の節電効果は約490万キロワットとなり、なお360万キロワット足りないと指摘する。
サマータイム制度は「意味がない」
野村総研は、「電力ユーザーの自発的な需要抑制策だけで、この夏の需給ギャップを埋めることは極めてむずかしく、計画停電は免れない」としている。
ただ、節電対策として浮上しているサマータイム制度の導入には「時間を数時間ずらすだけでは電力のピーク時には対応できないので、意味がない」と否定的。また、ピーク時間帯に電気料金を値上げして需要を抑える試みについても、「すでにギリギリまでピーク時間帯の負荷を落としている大規模ビルや工場などのユーザーが、電気料金を削減するためにどこまで需要を抑えてくれるのか、その効果は不透明だし、物理的にもこれからではむずかしい」と指摘している。
そのため、総量規制や「輪番操業」など確実に効果が見込める施策を通じて「計画停電の頻度や規模を最小化することを急ぐべきだ」と話している。
東電、計画停電「原則行わない」
一方、東京電力は4月8日、震災後から実施していた計画停電を、「今後、原則行わない」ことを明らかにした。震災による企業の生産活動の停滞や節電の取り組みなどを受けて、最近のピーク時の電力需要が2010年を20%下回っているうえ、気温の上昇で電力需要が当面は減少することを見込んでいる。
不足する電力量は、今後の供給力アップと、ビルや工場などの大口需要主や家庭への節電協力で乗り切る。もちろん、需給バランスが崩れれば、再び計画停電を行う必要が出てくる。