被災者のペット犬について、佐賀県武雄市が市民に里親ボランティアになるよう呼びかけていることが論議を呼んでいる。そのような手間をかけるなら被災者支援に回すべきという異論もあり、意見が分かれているのだ。
白戸家のホワイト犬シリーズのCMを手がけていて、犬には親しみがあるのだろうか。ソフトバンクの孫正義社長がこのところ、武雄市の取り組みについてツイッターで盛んに発言している。
池田信夫さん「一人でも多くの人間を救うのが先」
武雄市の被災犬受け入れ構想について、「ペットも飼主にとっては、家族同様」「全国に輪が広まる事祈ります」などと紹介。自らも「やりましょう。被災動物救済援助」とつぶやき、ペット情報をヤフーの復興支援サイトに追加してもらうよう働きかけたことも明かした。
これに対し、著名なブロガーの池田信夫さんが2011年4月6日、「行方不明がまだ1万人以上いるのに、犬の心配してる場合じゃないでしょ」とツイッター上で噛みついた。この発言には、「人命も犬の命も同じだ」と多くの反論が寄せられたというが、池田さんは7日のブログでその真意を説明した。
池田さんは、反論に驚いたといい、優先順位を考えると、「ペットを救う余裕があるなら一人でも多くの人間を救うのが先であり、野犬化する犬は処分すべきだ」と主張。そして、今必要なのは、優先順位をつけて「捨てる勇気」だとした。ツイッターでも、「ペットを連れて行くコストは被災者の自己負担にするのが優先順位」などと言っている。
ペット犬の受け入れができるなら、被災者をもっと受け入れるべきなのか。
武雄市「被災者を優先している」と強調
この点について、武雄市の被災者支援課では、あくまで被災者を優先していると強調する。
「私どもは、震災発生後にいち早く被災者のホームステイ受け入れを行ってきています。今回は、家庭の事情で犬だけならできるという市民がいることから、市内の動物愛護団体を通じた受け入れを構想したものです。ですから、被災者の受け入れにまだ余裕があるというわけではありません。善意でできることを考え、いろんな支援の1つとしてやっているということです」
受け入れは、被災者が避難所にペット犬を持ち込めずに困っていることを聞き、犬だけでも避難させたいというケースがあることから決めたという。当面は100匹の受け入れを考えており、2011年4月7日に被災者と一緒のケースも含めて市民から43匹の引き取り希望があった。
武雄市は動物愛護団体の取り組みに協力するだけであることから、池田信夫さんはブログで、「犬の心配してる場合じゃないでしょ」というツイッター発言について、誤解があったことを明らかにしている。しかし、「人命も犬の命も同じだ」との意見も多かったことから、「行政がその優先順位を混乱させるような指示を出してはいけない」と言っている。