震災から26日後、僕は初めて被災地へ入った。横浜から車で宮城県石巻市に入り、海岸線を北上することにした。震災直後から、その凄まじいまでの津波の威力を目の当たりにしてきたのだが、実際に被災地へ入り、その被害があまりにも広大なエリアに及んでいることに改めて驚かされた。車で一日走り続けても、被災地は途切れることがない。明日もこの状況が続くはずだ。
宮城県石巻市の市立門脇小学校周辺は、津波による火災で最も被害を受けた地域だ。校舎へ入ってみると、真っ黒に焼けこげた教室は、机もイスもスチールの骨組みだけになっていた。ただ、そこから数クラス離れた教室が奇跡的に火の手から逃れ、地震直後の姿のまま残っていた。26日前から全てが止まった教室で、乾電池式の壁掛け時計だけが、「チッ、チッ、チッ」と、誰に告げる訳でもなく、静かに時を刻み続けていた。(カメラマン・会田法行)