東日本大震災は自動車産業に大きな打撃を与えた。東北、関東の素材・部品メーカーが広範囲に被害を受けたため通常操業に戻るには相当な時間を要すると見られ、日本の部品を調達する米欧メーカーの生産にも影響を及ぼし始めた。そうしたなかで国内販売は急激な需要減が起きている。今回の大震災が「新車ディーラーの本格的な再編のきっかけになるのではないか」と見る業界関係者もいる。
「新規の客足がぱったり途絶えた。非常に厳しい」。首都圏のディーラー幹部は話す。3月といえば販売の書き入れ時だが、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が起きたあと被害の大きさが明らかになるにつれ来店が減り、商談が止まった。
「納期がいつになるかお伝えできないのが心苦しい」
首都圏では震災後の受注は前年同期の半分程度に落ち込んでいるディーラーが多い。「そもそも車の生産が止まってしまっているので積極的に営業ができない」と前出とは別のディーラーは話す。テレビCMやチラシなどの宣伝も手控えており、需要がますます減っている。
いま営業マンが奔走しているのはむしろ、注文済みの顧客に納期が遅れることを詫びる連絡を入れることだ。生産停止によって納期が延びるだけでない。すでにラインオフしストックヤードで納車を待つばかりだった車両にも、各メーカーで大きな被害が出ている。「お詫びするにも納期がいつになるかお伝えできないのが心苦しい」という。
5つのチャンネルを抱えるトヨタに注目集まる
もともとオーバーストアが指摘され、需要減に苦しんできたディーラー業界が、今回の大震災でさらなる痛手を被るのは避けられそうにない。一部で復興特需の発生は予想されるがマイナスのインパクトは一層大きい。業界関係者は売上減少が再編の呼び水になると見る。とくにトヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツ、レクサスと5つのチャンネルを抱えるトヨタには注目が集まっている。プリウス、SAIなどハイブリッド専用車はレクサスを除き全チャンネル販売し、2011年秋からダイハツから調達した軽自動車の販売に乗り出すなど、トヨタは以前には考えられなかったような国内販売政策を打ち出している。
しかし、全国各地の地元資本が様々なグループを形成しディーラー経営しているのに配慮し、5つものチャンネルを維持していることには変わりはない。「全国一律にチャンネル統合するのは困難だ」とトヨタの関係者は話す。共同店舗を増やし、看板はそのままに間接部門を統合するなど、地域事情に合わせたスリム化が進むと見られている。