気象庁の放射性物質拡散予測がようやく公開され、その予測マップが当てになるのか話題になっている。東京で予測に近い放射線量アップになったことがあるが、同庁では、予測は仮定あっての話で関連付けはできないと言っている。
気象当局の拡散予測については、ドイツやオーストリアなど欧米各国ですでに行われ、日本でも、その予測ぶりが関心を呼んでいた。
東京で予測に近い放射線量アップも
日本の気象庁も、要請を受けて、地震が起きた2011年3月11日から国際原子力機関(IAEA)に予測データを連日送っていた。放射性物質の拡散が国境を越えることが心配されるためだ。そして、批判を受けて、4月5日からようやく予測が公表された。
気象庁の公開前は、ドイツの気象局などが、風向きから3月21日21時に東京で比較的高い拡散があると予測。マップ上で赤く示されていたことから、ネット上で波紋を呼んだ。実際、東京・新宿の放射線量は、19日8時が0.047マイクロシーベルトだったのが、22日6時には0.131マイクロシーベルトと急上昇しており、原発で爆発のあった15日以来の大きな変化になった。
今回公開された気象庁の予測マップを見ると、3月21日の東京は、放射性物質の大気中濃度が原発周辺に次いで高い値になっている。また、地上降下量については、20~23日の積算では、今度は原発周辺と同じ最も高い値だった。
同庁企画課によると、大気中濃度と地上降下量をともに考慮したものが、その地域での放射線量に当たる。拡散予測は、あくまで仮定から算出したもので、実際の線量と関連があるとは言えないという。しかし、21日のケースでは、結果として、予測に近い線量アップになっていた。
ドイツなどの予測マップについては、濃度などの程度とマップの形は同じになるはずだという。ただ、21日のものを比較しても、若干ずれがあり、計算などが違う可能性があるようだ。
西日本では、局地的にごくわずかの影響?
気象庁などのマップを見ると、日によっては、西日本などにも放射性物質が拡散している予測が出ている。
実際、西日本各地でごく微量ながら放射性物質が検出されている。愛媛県では、2011年4月3、4日に採取した大気中のちりから、放射性ヨウ素131が基準値の1700分の1見つかるなどした。また、広島県では、3月30日から4月4日までに広島大キャンパスで採取した大気中のちりから放射性ヨウ素が愛媛と同程度検出されるなどしている。
兵庫県では、シンガポール当局が4月4日、2日前に輸入された同県産キャベツから国際ガイドラインを上回る放射性ヨウ素を検出したと発表した。日本の暫定規制値は大きく下回っていたものの、同県産を輸入停止にした。
しかし、兵庫県は6日、キャベツを検査したところ、放射性物質はまったく検出されなかったと発表。県農産園芸課では、シンガポールで他県産の大葉が愛媛産と誤って発表されたこともあるとして、今回も書類上の誤りの可能性があるとしている。
兵庫県の放射線量を見ても、3月15日と同21日に0.01~0.05マイクロシーベルトほどの一時的上昇があるだけで、まったく変化はない。
気象庁のマップでは、4月2~7日にかけて関西など西日本で微量の拡散予測が出ている。しかし、今のところ局地的にほとんど影響のない範囲での放射性物質検出に留まっているようだ。