福島第1原発の1~3号機のタービン建屋や坑道には高レベルの放射性物質汚染水が6万トンあると推計されている。現状すでに存在する5万トン分の排水・貯蔵先容量に加え、1万トンのメガフロートなど計8万トン分を確保する予定だ。しかし、原子炉冷却用の注水がもれており、汚染水は増え続けている。「非常手段」海への投棄は避けることができるのか。
東京電力は、比較的低レベルの汚染水1万1500トンの海への放出を2011年4月4日から始めている。国の基準の100倍程度の汚染濃度だ。
汚染水は4号機地下にも相当量ある見通し
海へは捨てず、復水貯蔵タンクなどへ移す作業を進めている高レベル汚染水は、基準の1万倍から1億倍超までの数値が検出されている。海江田万里・経済産業相は4月5日、「汚染された水を海にもうこれ以上流さない」と、今回の低レベル汚染水の放出が限定的な措置で、高レベル汚染水の海洋投棄はしない考えを示した。
経済産業省の原子力安全・保安院などは、高レベル汚染水は1~3号機に各2万トン、計6万トンあると推定している。排出先としては現状、集中廃棄物処理施設(3万トン)と復水器・復水貯蔵タンクなど(約2万トン)がある。
1万トン分不足する計算になるが、静岡市の港を出発し4月16日以降に現着予定のメガフロート(1万トン)や新設貯蔵タンク(約2万トン)と合わせ8万トン分の容量を確保するという報道もある。さらにパージ船(約1500トン)を数隻使う案もあるという。
しかし、汚染水は4号機地下にも相当量があるとみられる。また1~3号機についても冷却用の水が汚染された状態でもれ出ており、現状の推計である「6万トン」は今後増えてきそうだ。4月3日現在、1~3号機の原子炉へはそれぞれ1時間あたり6~8トン程度の注水が続けられている。
汚染水の処理が急がれるのは、汚染水が、電源を復旧し原子炉を冷やす水循環システムを稼働させるための作業の大きな妨げになっているからだ。汚染水処理が終わらないと、原子炉内を低い温度で安定化させる作業が本格化できない、というわけだ。