東日本大震災とそれに伴う原発事故で、大きな被害を受けた福島県で、今度は火山が噴火するのではないかという噂がネット上で飛び交っている。吾妻山の火口付近で炎が確認されたためだが、地震前からあった現象だという。気象庁も「人的被害が出る噴火が起きるような状況ではない」と否定している。
2011年4月5日未明、2ちゃんねるに「【福島】吾妻山が噴火か?」というスレッドが建てられ、吾妻山の大穴火口を写した画像が掲載された。
火口から白い煙と赤い炎
気象庁が設置したライブカメラの映像からとってきたとされるもので、撮影時刻は同日の2時半となっている。火口付近から白い煙と一緒に赤い炎が出ているように見える。15時ごろ日中のライブカメラの映像で確認しても白い煙が出続けている。
吾妻山は、福島と山形の県境にある連峰。日本の百名山に入っており登山客に人気が高いが、一方で火山群として30万年前から現在まで火山活動を続けている。1893年の噴火では、調査中だった技師ら2人が噴石に当たって死亡した。
現在、一部週刊誌で大地震の影響で、東北地方の火山が噴火するのではないかといった報道が出ている。吾妻山の画像も大きな話題となり、2ちゃんねるやツイッターには「日本終わったな」「ヤバくないか?」「福島はどうなってしまうんだ」といった反応が寄せられた。
「地元の人間にしてみれば、何を今更」
気象庁の火山課によると、2011年4月5日2時半ごろの映像で確認できる赤い炎は硫黄が燃焼しているもので、白い煙は水蒸気と見られるという。吾妻山では、2008年11月に白い煙が出ているのが確認され、300メートルもの高さにまで上った。硫黄の燃焼も2010年5月に確認され、以来度々同じような現象があったという。
現在、噴火警戒レベルは最も低い1。火山活動は「静穏」というレベルだ。吾妻山は2007年12月に気象庁が噴火警戒レベルを導入して以来、ずっと1のままだという。気象庁火山課の担当者は
「1893年の噴火で死者が出ましたが、吾妻山では歴史に残っている限り、それ以外で人的被害の出るような噴火は起きていません。以前もあった現象ですし、警戒レベルの引き上げも考えていません。絶対安心ということはないですし、引き続き注視していきますが、被害が出るような噴火が起きる状況ではないと見ています」
と話している。
福島県商工観光部観光課によると、地震後、地元で「吾妻山が噴火するのでは」といった声は特に挙がっていないという。ツイッターでも「地元の人間にしてみれば、何を今更」「福島市民だが、吾妻山はずっと前からあんなもんだ」といった呟きがあった。
ただ、今回の大震災の影響が全くないという訳ではない。吾妻山を通る観光有料道路、磐梯吾妻スカイラインの再開通が延期になった。管理している福島県道路公社のサイトでは、地震後除雪機械や燃料の調達が困難になっており、再開通日は当面未定だと説明している。