福島第1原子力発電所の事故を受けて、今後懸念されるのが、電力需要が大幅に増える夏に向けての対策だ。節電でピーク時の電力需要を減らすのはもちろんだが、「それだけでは間に合わない」との見方が大勢だ。
原発を今後どうするかという重い課題がのしかかるわけだが、「脱原発」を主張する意見が多い中で、「停止中の原発のスイッチを入れるべきだ」との声もある。もっとも、「非現実的だ」との反論も多い。それ以外にも、さまざまな意見が飛び交っている。
「柏崎刈羽、女川、福島第二を再起動する準備を進めるべきである」
当面は原発をあてにせざるを得ないとの立場をとるのが、経済評論家の森永卓郎さんだ。森永さんは、「サピオ」11年4月20日号の中で、
「『原発のスイッチを入れよ』残された道はそれしかない」
と主張。「私は原発の設計については素人なので、防護方法は専門家に考えてもらいたいが」と断った上で、
「早急に津波対策に取り組み、新潟中越沖地震の影響でまだ3基が停止している柏崎刈羽や、今回被災した女川、さらには福島第二を再起動する準備を進めるべきである。そうしなければ、日本経済の失速だけでなく、夏場に大規模停電が起きてエアコンが止まり、熱中症で亡くなる高齢者が続出する事態も起きかねない」
と論じている。
ただし、ネット上では、この意見には異論も多い。「はてなブックマーク」には、
「簡単に言うが、現状でスイッチを入れられる原発ってどれ?女川も福島第二も暴走こそ免れたが施設に大ダメージを受けててとてもスイッチを入れられる状況じゃない」
「『一見リアリズム風だが単なる逆張りでしかない非現実的提言』はもう見飽きた」
「経済アナリストなんだから、スイッチを入れたときに予想される周辺地域へのネガティブな反応と、その対応策ぐらいは一緒に提言しても良いのではないか」
といった、提言が現実的でないことへの批判も多い。
風力発電で電力需要はまかなえる??
一方、「週刊現代」4月16日号では、「『もう原発はいらない!』私はこう考える」という特集の中で、「脱・原発」を主張する大学教員の声を中心に紹介している。ただ、その中でも、
「1億2000万人の国民が、今の生活レベルと社会の安定を維持するためには、原子力も含むエネルギーの最良の組み合わせ、ベストミックスしかない」(寺島実郎・日本総合研究所理事長)
「原発は安全ではないが、やむをえず必要なもの」(大槻義彦・早稲田大学名誉教授)
と、規模を縮小しながらも、中長期的に原発は必要だとする論者もいる。
ネット上では、「風力発電所を建設すれば電力需要はまかなえる」との説も流布されている。東京大学生産技術研究所が行っている研究の
「経済的・社会的制約条件を考慮すると、本海域における開発可能量は年間94TWhに達し、東京電力の年間供給電力量の32%に相当する」
という結論部分が根拠とされている模様だ。だが、この研究では、茨城県鹿嶋市から千葉県の房総半島の南端まで、沖合40キロメートルまで大量に風車を建設することが前提だ。夏までに原発の代わりになるだけの発電量をまかなうのは困難だ。