東日本大震災で被災した人に適用される地震保険の支払い件数が50万件に達する見通しだ。保険金の支払い申請はこれまでに、大手3社だけで18万件を突破し、さらに増えるのは確実。保険金の支払い額は損保業界の全体で、1兆円規模に膨らむとみられている。
契約者からの申請は、2011年3月31日時点で損害保険ジャパンが約6万5500件、三井住友海上保険が約4万件。東京海上日動火災保険は4月1日時点で8万2800件を受け付けた。各社とも問い合わせや申請の受付に応じるため、コールセンター要員を増員したり、申請後の物件調査のため現地に調査要員を派遣したりと対応に追われている。
「地震保険にいまから入れるか。保険料はいくらか」
日本損害保険協会には、地震保険に加入している被災者からの問い合わせが相次いでいる。これまでに約2000件。震災や津波で、「保険証券を失くしたので、どうしたらよいか」「契約先がわからないので調べてもらえないか」といった内容が多い。
同協会はホームページで、契約会社を照会できるサービスも開始。また、本人確認ができれば保険証券がなくても対応するし、本人確認の書類がない場合でも契約者本人の氏名や保険の目的、建物の住所や電話番号がわかれば本人確認できると案内している。
大手損保では、三井住友海上のフリーダイヤルの事故受付センターとカスタマーセンターに約3万件の問い合わせが寄せられている。同社はこれまでに約4万件の地震保険の申請を受け付けているが、このうち1万7000件が東北地区、7000件が液状化現象に悩まされている千葉県と埼玉県だった。「震災直後の1週間は関東地区からの問い合わせが多かったが、通話できるようになってからは東北地区が増えた」と話している。
損保ジャパンは「震災直後は通常の3割増しくらい。(地震保険に)いまから入れるか。保険料はいくらか、といった問い合わせが多い」と話す。
火災保険だけだと保険金は「ゼロ」
「実際の保険金はどのくらいになるのか」――。こうした問い合わせも少なくないようだ。個人向けの地震保険は、火災保険に加入していることが前提。保険金額は建物で5000万円、家財で1000万円の合計6000万円を上限に、火災保険の保険金額の3~5割に設定している。たとえば、建物に1000万円の火災保険をかけている場合、地震保険は300万~500万円の範囲で選ぶことになる。
保険金は、地震とそれによる津波、液状化現象による損害も支払い対象になるが、実際の支払い金額は損保会社の調査員が調査して決める。建物の時価を基準に、倒壊や傾斜、損傷の度合いが厳しく査定され、「全損」と認定されれば契約金額の100%(時価が限度)が支払われる。しかし、「半損」だと約50%、「一部損」は5%になってしまう。
ちなみに、阪神・淡路大震災のときの支払い金額は平均1件あたり119万円程度だった。
東日本大震災では、宮城県気仙沼市や岩手県大槌町と山田町の一部について、航空写真や衛星写真を使って「全損」を確認することで、保険金を満額支払うことを決めた。日本損害保険協会は「まだ一部分でしかない。これから順次作業して確認していく」と、「全損」地域が広がる可能性はある。
とはいえ、地震による津波で家を失った人のうち、火災保険に加入していたが地震保険には入っていなかった人には保険金額の支払いはない。「ゼロ」だ。
地震保険の世帯別加入率は、宮城県で32.5%、岩手県で12.3%、福島県で14.1%(09年度末)でしかない。