福島第1原子力発電所の事故処理が進展しない現状に、国際社会もいら立ってきた。放射性物質が大気や海水へ放出されたままで、有効な手を打てない日本政府の対応に不満を募らせる。
東日本大震災と津波で未曾有の被害を出した日本に同情的だった海外の論調も、原発対策の遅れとともに「日本は何をやっているのか」と風向きが変わりつつあるように見える。
「東電社員の死をすぐ発表しなかったのはなぜか」
「日本の原発、数か月にわたって危険な放射性物質放出の可能性」
米ワシントンポスト電子版(WP)は2011年4月3日、このような記事を配信した。細野豪志首相補佐官がテレビ番組で、福島第1原発から放出される放射性物質を止めるのに数か月かかる目算を示したのを引き合いに出したのだ。記事の中では、当局が「数か月」と発表せざるをえなかったのは、「損傷した福島第1原発の修復が困難で、すでに4週目に入っている大規模な事故対策も見通しが立っていないことの証明だ」とした。
さらに同紙は、東京電力と日本政府が原発関連の情報を適切に開示しておらず、外部の有識者やメディア、世論から批判を浴びていると指摘、「記者の間では不信感が募っている」とした。4月3日に東電は、行方不明となっていた同社の社員2人が3月30日に4号機のタービン建屋地下で遺体となって発見されたことを明らかにした。
すると、3日夕方に開かれた海外メディア向けの記者会見で、記者から「東電社員の死をすぐ発表しなかったのはなぜか」「どうして東電の幹部は、社員が亡くなったことを公表した会見に同席しなかったのか」と質問が飛んだ。だが、政府の広報官からは満足な回答が返ってこなかったという。
高濃度の放射能汚染水が海に流れ出したことも、海外メディアの高い関心を集めた。2号機の取水口付近にあるピットの壁の亀裂から漏れ出したと見られるが、米CNNやウォールストリートジャーナル、英ガーディアンなど欧米の主要紙やテレビのニュースサイトがこぞって写真入りで紹介した。CNNの記事には1700件ほどのコメントが寄せられている。中には、
「日本(政府)が意地を張らずに、米国の専門家が『廃炉を決めて、原子炉にセメントを注入せよ』と助言したのを受け入れていたら、こんな大事にはならなかった」
と、日本に対するあからさまな批判も出始めている。