原子力と放射能の基礎知識/連載(2)放射性物質・放射能・放射線とは 
日本原子力学会異常事象解説チーム/二ツ川章二管理本部長(日本アイソトープ協会)

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   日本原子力学会の異常事象解説チームによる連載第2回は、日本アイソトープ協会の二ツ川章二氏が、放射線と放射能、放射性物質の違いについて解説する。

――放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線(X線)、中性子線等様々な種類の放射線があります。放射線とはアルファ線、ベータ線のような高速で走る小さな粒子の高速粒子線とガンマ線(X線)のような高エネルギー電磁波です。

   いずれも持っているエネルギーが高いため放射線の通過した周辺の物質と様々な相互作用を行います。物質との相互作用は放射線の種類によって異なります。例えば相互作用の一つである物質を透過する力はアルファ線ではごく小さく、ベータ線では少し大きく、ガンマ線ではさらに大きくなります。

放射性物質が放射線を出す

   その相互作用を利用し、病気の診断、がんの治療、紙や鉄の厚さの測定、医療機器の滅菌等、私たちの生活の中で放射線が利用されています。また、人体に放射線が当たる(被ばくする)と人体の細胞等と相互作用を行い、様々な影響が現れます。例えば、エネルギーの高い電磁波であるガンマ線は、同じ電磁波の一種である紫外線と同じように皮膚に大量に当たると、やけどのような症状を生じさせます。

   放射性物質とは、放射線を放出する物質をいいます。私たちの世界は、水素、酸素、炭素、鉄、銅、金等様々な物質(元素)でできています。中世のヨーロッパで錬金術師が「賢者の石(金)」を手に入れることが不可能だったように、普通の物質は他の物質には変わりませんが、物質の中には不安定で放射線を放出して他の物質になるものがあり、それらを放射性物質とよびます。放射性物質の種類によって放出される放射線が決まっています。

   例えば、今回、福島第一原子力発電所から放出され検出されているヨウ素-131は、ベータ線という放射線を放出してテルルという別の物質となります。ヨウ素は海草等に多く含まれ、海草を食べることによって体内に取り込まれたヨウ素は甲状腺に多く取り込まれます。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの成分として人体にとって必須元素です。放射性物質であるヨウ素-131もヨウ素と同様に人体に入ると甲状腺に取り込まれ甲状腺ホルモンの成分となりますが、放射線を放出するため甲状腺被ばくの原因となります。

半減期13億年の放射性物質も

   放射性物質は特殊な条件でだけ存在するのではなく、自然界にも存在しています。例えば、大気中には炭素-14が存在していますし、多くの食品中にはカリウム-40が存在しています。

   放射能とは放射性物質がどれぐらいの量の放射線を放出するかという能力のことをいい、ベクレル(Bq)という単位で表します。ベクレルが大きいとその放射性物質からたくさんの放射線が放出されるということです。放射性物質の能力である放射能は放射性物質と同義として使われることもあります。

   しかし、放射性物質(放射能)と放射線とは異なります。放射性物質が放射線を放出する能力である放射能が半分になるまでの時間を半減期といいます。半減期は放射性物質の種類毎に決まっており、ヨウ素-131は8日、セシウム-137は30年、炭素-14は5730年、カリウム-40は13億年です。

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