「炉心には今でもある程度の中性子がある」
さらにダルノキ・ヴェレス博士は、3月25日に東京電力が発表した、1号機の原子炉を冷却するために使用された海水に含まれる放射性物質の調査結果について解説。特に同博士が強調したのが「塩素38」という物質の存在だ。半減期が37分と短い物質にもかかわらず高濃度で検出されたため、注水された海水の塩に含まれる「塩素37」が中性子と結びついて作り出されたものではないかと推測し、1号機の原子炉が中性子を生む「再臨界」だったのではないかと考える。
しかし、この「再臨界説」には懐疑的な向きもある。東京大学大学院理学系研究科の早野龍五教授は3月26日、ツイッターで「塩素38」について触れ、「炉心には今でもある程度の中性子がある(必ずしも臨界を意味しない)」と書いた。続けて「海水を真水に変えれば改善するはず」としている。すでに1号機への注水は、海水から真水に切り替えられている。
枝野幸男官房長官は3月31日午前の記者会見で、IAEAが再臨界の可能性を指摘したことを質問され「あらゆる事象について可能性を否定できない」としながらも「そうした事態が生じているという明確な兆候があるわけではない」と答えた。また経済産業省原子力安全・保安院も同日、現段階で再臨界が起きている可能性を否定している。