「海へ流す」とどうなるか 原発汚染水処理と国際世論

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   福島第1原発の汚染水処理が大きな課題となっている。原子炉や燃料プールへ水を循環させ冷やす作業を本格化させるのに深刻な障害となっているのだ。施設内のタンクへ汚染水を移す作業が始まり、タンカーを近づけて汚染水を移す案も検討されている。「海へ放出」というのは無理なのだろうか。

   「このまま行けば、大量の放射能を海など外の環境に投棄せざるを得なくなる」。第1原発の2号機タービン建屋から地下を通って海側の陸地表面までつながっているトンネルにたまった水から毎時1000ミリシーベルト以上の強い放射線が測定されたことを受け、2011年3月29日付朝刊で、朝日新聞は汚染水処理問題について、こう懸念を指摘した。

「タンカーへ移す」案も

   トンネルは、「トレンチ」と呼ばれ、水用配管や電線などが通っている。2号機だけでなく1号機、3号機にもある。2号機トンネルの場合、縦に16メートルの深さ、地下水平に約75メートルの長さがある。ほぼ満水で、水量は6000立方メートルに及ぶという。1~3号機のトンネル内汚染水だけでなく、タービン建屋内にたまった汚染水も処理する必要がある。

   3月31日午前現在、1号機のトンネルの汚染水を貯水タンクへ移すなどの作業が行われている。しかし、建屋内も含めた汚染水は、原子炉を冷やすための注水がもれたものである可能性や、燃料プール冷却のための放水が流れてきたものとの指摘が出ており、かつ冷却作業はやめるわけにはいかないことから、汚染水は今後増える懸念もある。内閣府の原子力安全委員会は3月29日、汚染水処理にタンカーを利用することも考慮に入れる必要があると指摘した。

   タンカーを政府が借り上げて原発近くに停泊させるか接岸させるかして、ポンプで汚染水を移すというアイデアだ。しかし、作業員の安全確保などの問題から慎重な意見も出ている。土を掘って池をつくり、そこに汚染水を流し込む案も出ているが、地下にしみださない処置などの手間を考えると時間がかかりすぎるという指摘もある。

かつてロシアがバッシング受けた理由

   「緊急性」を重視するならば、3月29日の朝日新聞が懸念した「海へ放出」という選択肢が現実味を帯びてこないだろうか。3月31日には、第1原発排水口から南約330メートルの海水から基準の4800倍を超える放射性ヨウ素131が検出されるなど、すでに海から高い数値が何度も出ている。その度に経済産業省の原子力安全・保安院は「海流で拡散される」「相当薄まる」と「安全性」を強調している。

   一方で同院は3月29日夕、汚染水処理について、「そのまま海に放出することはない」「最悪の場合の想定(海へ流す)も考えていない」と会見で明かした。

   「海へ放出」について、国際世論の動向との関係を指摘するのは、元外交官で作家の佐藤優氏だ。3月29日更新のブログ「佐藤優の眼光紙背」で、1993年にロシアが「国際原子力機関(IAEA)の規則通り」「低濃度の放射性液体物質」を海に投棄した例を挙げ、ロシアが国際的にバッシングを受けたと指摘。その上で、日本政府に対して「ダメージコントロールについて、政治主導できちんと考えておく必要がある」と、仮に汚染水を海へ流すことになった場合の国際世論への対処について注文をつけている。

   2010年3月31日、政府が汚染水を貯蔵し処理する新たな施設を福島第1原発敷地内につくる案について、「方針を固めた」「検討を始めた」などと報じられた。

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