「日本に明るさを」とカズ・ダンス披露
「ショートバウンドが上がったところを右足で叩くのが、あの人はうまいんですよ。だから、これまでたくさん点を取ってきたんですね。こぼれ球や不規則なバウンドでも、うまく足に当てられるのは、天性と練習の賜物でしょう。昨年は試合に出てくると調子がよく、最後の5分でもあきらめずにシュートを狙っていました。後半も点数が取れず『ここで何とかしてくれ』というときにやれるのは、『やはり特別な人なんだな』と改めて思いましたね」
三浦知良選手の引退がいつになるのかも話題になっているが、後藤健生さんはこう言う。
「昨シーズンも点を取っていますし、今年も練習などで次々にいいゴールを決めています。ですから、J2のレベルなら十分にまだやっていけるでしょう。あれだけの名声や稼ぎがあるのに引退しないのは、それだけサッカーが好きなんでしょうね」
また、カズ・ダンスも、絵になるところがすごいという。「恥ずかしがったり、ためらったりしたらダメになるところが、ゴール裏まで行ってできるところが素晴らしいですね」
ただ、三浦選手本人は、ゴールを誓いながらも、苦しんでいる被災者がいる中で、歓喜のカズ・ダンスを披露するか悩んだという。
三浦選手は、試合前の2011年3月25日、日経新聞のコラム「生きるための明るさを」でその思いを打ち明けている。
コラムでは、震災を前にしてサッカーの無力感を告白。医者や食料など必要なものに優先順位を付ければ、「なくていいもの」に見えたという。しかし、懸命に生きる被災者の姿から逆に勇気をもらい、明るくないと生きていけないと思い直した。
試合後のインタビューでは、カズ・ダンスについて聞かれると、「ダンスも期待されているんで応えました。微力ながら、日本を明るくすることができればいいかな」と答えている。