東京電力株の暴落が止まらない。6日続落、しかも3日連続のストップ安となった2011年3月30日は、終値で前日比100円安の466円だった。
前日は福島第一原子力発電所のプルトニウム漏れや、一部の報道で「国有化」が伝えられたこともあって「投げ売り」状態だったが、それが続いた。東電株の500円割れは1962年12月28日以来、48年3か月ぶり。時価総額も7500億円を割り込む水準にまで落ち込んだ。
3日連続ストップ安、震災前より81.4%も下落
東電株は3月30日朝から「売り」が続き、70円安の496円で寄りついたが、さらに売られて前場でストップ安を付けた。東北関東大震災前の10日の東電株は2153円。そこから13営業日で、1687円(81.4%)も下落したことになる。3兆4600億円あった時価総額が、2兆7100億円も吹っ飛んだ計算だ。
東電株が暴落する要因は、「国有化」説が現実味を帯びてきたことだ。福島原発事故の補償問題は、避難地域が広範囲に拡大したことや周辺住民だけではなく、農家や企業の被害に対する賠償も含まれ、数兆円規模にのぼるとみられている。政府が原子力損害賠償法を適用して一部を負担する方向だが、すでに賄えない規模になっているとの指摘もある。
さらに、東電には今後の電力供給力を確保するために火力発電所の増設が必要だ。また、原子炉を廃炉とする場合にかかる解体費用や放射性廃棄物の処理費用の負担ものしかかる。
しかし、現状ではこうした賠償や「再建」のための費用を捻出する力が東電にはなく、電力事業の継続にも不安を残す。そのため、「政府による支援は避けて通れない」との見方は支配的だ。
そこに、玄葉光一郎国家戦略担当相の「東電のあり方はさまざまな議論があり得る」と、国有化をほのめかすような発言があったことで「投げ売り」に拍車がかかったようだ。
「株主や債権者の負担は回避される可能性が高い」
東電の国有化については枝野幸男官房長官が3月29日のうちにこれを否定したが、政府の支援、つまり公的資金の注入は免れないと見る向きは多い。
シティグループ証券は、東電「国有化」の4つのシナリオを示している。
シナリオ1 債務超過を前提とした一時国有化(1998年の旧日本長期信用銀行型)
シナリオ2 資産超過を前提とした実質国有化(2003年のりそな銀行型)
シナリオ3 法的整理後の一時国有化(2010年の日本航空型)
シナリオ4 ゴーイングコンサーン(会社が将来にわたって事業を継続していくことを前提に存続)
シナリオ1と3の場合は、株主責任が問われるので保有している東電株の価値がなくなる。
東電株の持ち株比率は、政府が3.11%、銀行や生命保険などが34.13%、外国人投資家17.37%。個人株主は37.87%を占めている。震災前まで、東電株は超優良銘柄として多くの投資信託に組み込まれていたし、個人投資家も比較的「安心して」投資していた銘柄だ。しかも、高齢者が保有しているケースが少なくない。東電株の価値がゼロになる影響は、かなり大きい。
シティグループ証券は「東電の公共性や公益性、そして代替の可能性が限定されることを踏まえれば、株主や債権者の負担は回避される可能性が高い。いまは『国有化』という言葉に過剰反応している」という。