「30キロ退避は妥当だが絶対ではない」 原発の放射線被害、米国の専門医師が見解

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   来日中の米国の医師ロバート・ゲール博士(65歳)は2011年3月28日夜、東京で記者会見し、焦点になっている福島第一原発事故への対処法などについて問題に放射線被曝医療の専門家としての見解を発表した。

   ゲールさんは1986年のソ連・チェルノブイリ原発事故では原発作業員らの骨髄移植治療を行い、99年の茨城県東海村の事故でも治療を指導している。25日には首相官邸からの文書による質問に対して文書で助言、26日は福島原発周辺を視察し、原発関係の医師とも意見交換した。

作業員の事前被爆対策は難しい

   原発作業員の被曝対策として、あらかじめ血液幹細胞を採取して保存せよとの意見が日本の専門家からあがっていることに対し、ゲールさんは「合理的でない」と述べた。重大な被曝は骨髄と同時に皮膚や肺障害が致命的で、血液幹細胞移植だけでは救命できない。どの作業員が被曝するかが予測できないため、対象者が膨大になること、採取自体が身体にダメージになる、などの理由を挙げた。

   避難地域以外から高濃度の放射性物質が検出されている。日本政府が定めた避難要請エリアは半径30キロだが、米国は80キロ圏内の米国人に退避勧告を出した。この点についてゲールさんは、放射性物質の量と水素爆発などで達した高度から推定して、現状では日本の判断が妥当とみる。ただ、「どれだけ広げても、風や地形などで放射能の集中地域 (ホットスポット) がありうる」という。チェルノブイリ原発事故では、放射能の雲が英国の一部に達し、雨が降ったことで避難地域並みの放射能汚染を起こした例を紹介した。

   避難地域内での立ち退き拒否や一時帰宅問題に関連して「退避は科学的にはすべての人に必要というわけではない」とし、本来は個人の対応の問題とした。がん発生の確率の話なので、妊婦や子どもの退避は切迫した問題でも高齢者や喫煙者では意味は乏しい、という主張だ。

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