東北関東大震災により、自動車業界の生産停滞が続いている。しかし、一歩一歩、復旧に向けた動きも着実に進んでいるのも確か。日ごろのライバル同士が「オールジャパン」の旗のもと、結束して危機を乗り越えようとしている。
多くのメーカーがひしめくように見える日本の自動車業界だが、乗用車の完成車メーカー8社の提携関係をつぶさに見ればトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社グループに集約できる。
3社のトップが「ホットライン」で結ばれる
トヨタグループには資本関係のあるダイハツ工業、富士重工業。日産グループは資本関係こそないが、最近の矢継ぎ早のOEM(相手先ブランドによる生産)提携を見れば三菱自動車、マツダ、スズキが緩やかながら一体感がある。そして、ホンダだけは独立独歩を続けている。
つまりトヨタ、日産、ホンダの「日本版ビッグ3」が手を組めば「オールジャパン」になるのだが、震災発生直後から、この3社のトップが「ホットライン」(日産の志賀俊之最高執行責任者)で結ばれ、頻繁に電話で連絡をとりあっているというのだ。
最大の課題は被災した部品メーカーの支援。3社は、直接取引する「1次」と呼ばれるメーカーを中心に、場合によっては1次の下請けにあたる2次、3次メーカーについても、復旧状況について情報を共有することを確認している。
3社の間で確認されていることの一つには、「再開を急がない」こともある。これは「トヨタが」と付け加えてもいいようだ。というのも実際、被災状況から見てトヨタより東日本の「生産拠点密度」の高いホンダや日産、とりわけホンダが大変なのは明らかだ。トヨタが「うちは安全」と言って再開を急げば、取引先部品メーカーに圧力をかけることにつながりかねない。まずは日本全体の1~3次、あるいはその先まですそ野の広い部品メーカーの復旧を最優先させることにしたのだ。