個人投資家の損失「肩代わり」 震災でネット証券に「キズ」

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   東北関東大震災直後に大きく下落した株価の影響で、インターネット証券が疲弊している。日経225先物やオプション取引などのデリバティブ取引に投資していた個人投資家が出した巨額損失を、ネット証券が「肩代わり」している状況が続いていて、しかもその債権の取り立てが不能になる可能性は高いためだ。

   すでにカブドットコム証券やマネックス証券、松井証券、岡三オンライン証券が、債権が回収できない「不足金」が発生していることを明らかにしている。

「追い証」回収できなければ証券会社の「損失」に

   東京株式市場の日経平均株価は、震災後の2011年3月14、15日の2日間で約1650円も急落した。その影響で大きな損失を出した個人投資家は少なくないが、証券会社が負ったキズも小さくない。

   株式の信用取引や、日経225先物やオプション取引といったデリバティブ取引など、証券会社に証拠金を差し入れて元手よりも大きい金額を売買する取引では、価格が大きく変動して含み損が発生した場合、投資家は追い証を差し入れる必要が出てくる。

   一方、証券会社はこの追い証分を立て替える形になっているため、投資家から追い証が取れないと損失が発生するというわけだ。

   震災後の株価急落は下げ幅が大きかったこともあって、追い証を支払っても損失を穴埋めできないほどお客の損失が膨らんだ。それによって、カブドットコム証券は39億円、マネックス証券13億円、松井証券35億円、岡三オンライン証券は18億円の債権が取り立て不能になる可能性がある。あるネット証券大手の広報担当者は、「現在はあくまで可能性の段階なので、すべてが損失というわけではない」と話す。

   いずれのネット証券も、「不足金」は貸倒引当金として11年3月期決算で計上する見通しだが、「財政状態を損なう規模ではない」と説明している。

ひまわり証券は証券業務から撤退

   こうしたことから、ネット証券ではこれ以上の損失拡大の防止や、事業や財務基盤の立て直しに着手している。

   SBI証券や楽天証券、松井証券などは「相場状況しだいでは新たに不足金が生じる可能性があり、追加的な損失を抑える」ため、新たにデリバティブ取引を始める投資家に対して証拠金を、取引所の基準変更に合わせ、2011年3月28日から引き上げた。

   18億円の「不足金」を計上した岡三オンライン証券は、岡三証券グループを引受け手とした20億円の第三者割当増資を実施して自己資本を厚くした。

   また、ひまわりホールディングスは傘下のひまわり証券が手がける日経225先物やオプション取引などデリバティブ取引や、現物株取引と信用取引、投資信託の販売などの証券業務から撤退し、今後は「FX専業」の証券会社になる。同社も「多額の不足金が発生している」という。

   ひまわり証券のように、デリバティブ取引でお客や取引量を増やしてきた証券会社は少なくない。先物取引などは、FXがデリバティブ取引の一種なのでお客がなじみやすいことや、大手証券との差別化戦略として積極的に導入。ネットで手軽に取引できる利便性を武器に、ここ数年で急成長していた。

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