深刻な事態に陥っている福島第1原子力発電所では、汚染水の排出作業が難航している。
東京電力は2011年3月28日夕方、1~3号機タービン建屋外の「トレンチ」と呼ばれる地下トンネルで、放射性物質を含む大量のたまり水を新たに確認したと発表した。
2号機のトレンチのたまり水からは、毎時1000ミリシーベルトの放射線が測定された。これは15分で緊急時の作業員の被ばく線量上限に達してしまう量だ。
1号機で3100トン、2号機で6000トン、3号機で4200トン
トレンチから海までの距離は50~70メートルほどで、容量は1号機で3100トン、2号機で6000トン、3号機で4200トン。東電によれば、いまのところ放射線物質を含む水が海に流れ込んだ形跡はないが、水面の高さは地表面近くまで迫っている状態という。
トレンチには冷却用の海水を循環させる配管などが通っており、建屋とつながっている。建屋の地下にも同じような汚染水がたまっている。
東電は建屋内からの排水に必死だ。しかし、核燃料を冷やすために海水や水の注水作業を止めることはできない。注水を止めれば核燃料の温度は上昇し、燃料棒の溶融や原子炉損壊の危険性が高まる。東電は漏出を減らすため、27日夜、2号機の注水量を毎時約17トンから約7トンと最小限に減らしたが、その後燃料棒の温度は上がり続けた。
枝野幸男官房長官は29日の会見で、「燃料棒が空だきのような状況になることは優先的に阻止しなければならない」と、注水作業を優先させる考えを示した。
注水が続けば、漏れは続くと見られている。朝日新聞は29日の朝刊で、「このまま行けば、大量の放射能を海など外の環境に投棄せざるを得なくなる」としている。