福島第1原発事故を受け、大気中だけでなく、海水や土壌でも高い値の放射性物質が検出されている。専門家からは、福島県内の一部の土壌汚染について「チェルノブイリ強制移住以上レベル」と指摘する声もあがる。どんな対応策、復旧策があるのか。
農水省の筒井信隆副大臣は2011年3月28日、参院予算委員会で、農・畜産業者への補償に関連して、放射性物質による汚染で耕作できなかった場合は、損害賠償の対象となる考えを示した。また、土壌改良にかかる費用も「補償の範囲だ」と述べた。同省は、福島県だけでなく周辺の県でも自治体と協力しながら農地の土壌調査を実施する考えだ。
表層の土を地下に埋める対策も
福島県では、原発から北西約40キロという、屋内待避地区(20-30キロ)よりも遠い飯舘村の土壌から高い値の放射性物質が確認されている。3月20日の文部科学省の調査によると、通常の1600倍以上のセシウムのベクレル値が検出されるなどしている。
京都新聞は3月28日、同村の土壌汚染レベルは、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の際に強制移住対象(30キロ圏)とされたセシウムのベクレル値の2倍を超えている、とする京都大原子炉実験所の今中哲二助教の試算を紹介した。
チェルノブイリ事故を受けた土壌汚染の復旧例としては、表層数十センチの土壌をいったん除き、さらに土を掘った上で表層にあった土を埋めるなどの土壌入れ替え作業などが知られる。ナタネなどを植えてセシウムなどを根から吸収させ一定の効果があがっているという報告もある。
「問題は土壌など2次的汚染」の指摘も
日本の土壌汚染対策法は、対象とする有害物質としては「放射性物質を除く」となっており、放射性物質による土壌汚染の復旧方法は今後詰めていくことになるという。環境省や農水省、文部科学省、経済産業省の担当者らは「政府一体となって(汚染土壌復旧の)対策が必要になるかもしれないが、現時点ではまずは調査・実態把握が重要だ」と口をそろえている。
毎日新聞(3月20日)は、イタリア国立原子物理学研究所のアドルフォ・エスポジト放射線予防部長の「燃料溶融という最悪の事態になっても、問題は大気中への放射能拡散よりむしろ土壌や作物、水、家畜など長期の2次的汚染にある」とするコメントを報じた。