原発の増設・新設が延期や凍結 日本のエネルギー政策「今が正念場」

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   東京電力福島第1原発の重大事故を受け、全国に9基ある原発の増設・新設計画が延期や凍結に追い込まれるのが確実になった。電力会社は毎年3月末に翌年度の電力供給計画を経済産業省に提出することになっているが、東京電力と東北電力は供給計画の提出そのものを見送り、原発の建設計画を事実上、凍結した。

   中部電力は浜岡原発6号機(静岡県御前崎市)の着工時期を先送りしたほか、中国電力は上関原発(山口県上関町)の着工に向けて進めていた海面の埋め立て工事を一時中断せざるを得なかった。一連の動きは、今回の重大事故に対する電力各社の動揺ぶりを如実に表わしている。

「原発を運営する電力会社は東電と同じ船に乗っている」

   今回の事故について、東電のライバルの大手電力会社の最高幹部は「最悪の事故が日本で起きてしまった。原発を運営する電力会社は東電と同じ船に乗っている。今後、原発に対する風当たりが強くなるのは避けられない。原発の新規立地は今でも厳しいが、今後はもっと難しくなるだろう」と本音を漏らす。

   原子力本部長を務めたこの幹部は「とにかく今は国と東電に頑張ってもらい、被害を食い止めてもらうしかない。我々も今が正念場だと思っている」と語る。

   国内には現在、54基の原発があるが、地震大国・ニッポンだけに、いつどこで大地震と大津波が「想定」を超えて襲うとも限らない。今回の事故は全国10電力会社のリーダーとして君臨してきた東電が起こしただけに、電力業界ではショックが大きいのだ。

   多重防護のシステムが機能せず、コントロール不能に陥った原発が長期にわたって放射性物質を外部に放出し、農畜産物や水道水にまで放射能汚染が広がる最悪の事態となった。兆円単位と予想される今後の損害賠償請求の補償額しだいでは、東電の存続そのものが問われる可能性がある。市場では早くも「東電の一時国有化は避けられない」「外資に安く買われるのではないか」などの見方が広がっている。

非常用発電機のバックアップ体制などを強化

   東電を筆頭とする電力会社と政府は地球温暖化防止のため、現在の54基に加え、新たに9基の原発の建設に着手する計画だった。現在、原発の増設・新設計画があるのは、東北電力の浪江・小高原発(福島県=2016年度着工)、東通原発2号機(青森県=2016年度以降着工)▽東京電力の福島第1原発7号、8号機(福島県=2012年4月着工)、東通原発2号機(青森県=2014年度以降着工、東北電力の同名原発とは別物)▽中部電力の浜岡原発6号機(静岡県=2015年度着工)▽中国電力の上関原発1号機(山口県=2012年6月着工)、同2号機(山口県=2017年度着工)▽九州電力の川内原発3号機(鹿児島県=2013年度着工)――の計9基。

   このうち、着工が最も早いのは、皮肉にも今回の事故が起きた東電の福島第1原発の7、8号機で、この4月に着工する予定だったが、新規着工どころでないのは言うまでもない。

   電力各社は東電の事故を教訓に「新たな知見を反映し、安全策に万全を期す。原発はエネルギーの安定供給に欠かせない」(大手電力会社)というのが公式答弁だ。当面は津波対策のほか、万一、津波で電源を失った場合の非常用発電機のバックアップ体制などを強化するといい、関西電力は最大1000億円を投じる方針を表明済み。しかし、ひとたび重大事故が起きれば、取り返しがつかなくなることが証明された原発の新規立地に政府と電力会社がどこまで本腰を入れるのか。日本のエネルギー政策がターニングポイントを迎えたのは間違いない。

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