飲料水や食品に含まれる放射性物質について、国の暫定規制値が緩和される見通しが報じられている。
水道水については、乳児が飲める暫定規制値を超えた浄水場が東京などで相次ぐ騒ぎになった。また、ホウレンソウなどの野菜についても、規制値を超えた福島県産などが次々に出荷規制されている。
ところが、その騒ぎの元になった規制値が緩和され、より高い放射線量の水や食品が許容されるというのだ。
報道によると、内閣府の食品安全委員会は2011年3月25日、規制値を緩和する方向でまとまり、厚労省がその答申に基づいて、新しい規制値を定める見通しになった。
2倍にまで引き上げられる見込み
現在の規制値は、原発事故という緊急事態を受け、原子力安全委員会の指標に基づいて、同省が17日に決めた。放射性ヨウ素131では、人体への影響を考え1年間に取る量を50ミリシーベルト以下とされた。その場合、飲料水や牛乳、乳製品に含まれるヨウ素は、乳児を除くと1キログラム当たり300ベクレル以下となっている。また、野菜類に含まれるヨウ素は、2000ベクレル以下となる。
新たな規制値では、これらが緩和されるといい、一部報道では、2倍にまで引き上げられる見込みともされている。
こうした報道に対し、規制値超えが何度も騒ぎになっただけに、ネット上では、疑問の声が相次いでいる。一体これまでの規制値は何だったのかということで、新しい規制値の水や食品を長期間、幅広く取った場合などについて不安も出ているようだ。
世界保健機関(WHO)の日本語版サイトによると、飲料水の場合は、水質ガイドラインを1キログラム当たり10ベクレルとWHOが定めている。しかし、これは、原発事故時の規制値ではなく、かなり保守的に日常飲用の基準を定めたものだ。事故時の初期運用レベルとしては、国際原子力機関(IAEA)が定めたものとして、3000ベクレルが基準になっている。
3000ベクレルは、腹部CTスキャン1回分に相当する。これに対し、日本の暫定規制値の300ベクレルは、1年間に浴びる自然放射線量、もしくは胸部X線検査 10~15 回分に相当する。つまり、もし新しい規制値が2倍に引き上げられたとしたら、この倍のX線検査を受けたと考えられるかもしれない。
もちろん、毎日600ベクレルの水や牛乳を飲むとは限らない。また、WHOでは、300ベクレルの水であっても、あくまで危険予防のための数値であって、健康上のリスクが生じるわけではないとしている。