ジャーナリストの山路徹さん(49)が、自身が代表をつとめる紛争地帯専門の映像取材会社「APF通信社」を通じて、原発事故現場に近くマスコミも入ろうとしなかった被災地からの情報を伝えようと取材に奮闘している。ツイッターからも逐一、現地からの様子がつぶやかれている。
東北関東大震災が起きた翌日2011年3月12日、APF通信の取材班――記者2人、カメラマン2人は、すぐさま東北地方へ向かった。辿り着いた場所は、福島第1原発から半径30キロ圏内にある南相馬市だ。
英BBCやロイター通信、米ABCテレビで配信
ここで撮影された街や市民の様子、桜井勝延・南相馬市長インタビュー、南相馬市立総合病院・院長インタビューなどの映像が、自社サイトから発信されている。とくに、市長へのインタビューにより、南相馬市の物資の供給が足りていない現状が知られるようになった。別の映像では、山路さんらが車で市内をまわり、現地の人たちから話を聞いて構成したものもある。これらの映像は、英BBCやロイター通信、米ABCテレビなどでも配信された。
また、山路さんは自身のツイッターでも「南相馬市は屋内待避指示が出されており、街に人の姿は一切、見られません」「救援活動もままならない状況」「原発を抱えた南相馬市は二重苦です」などと現地の様子を伝えた。そして、当時、南相馬市での取材を通じて感じたことは、報道陣がほとんどいないことだったという。
「頑張れマスコミの記者たち」
「マスコミもまた被爆を恐れて南相馬市には行きません。NHKも電話取材のみ。30キロ圏内に取り残された人々の事を伝えなくていいのか?報道の使命は?」(16日)「30キロ圏内の福島県南相馬市には一台のカメラもありませんでした。報じられない現場は、存在しないに等しい」(17日)
山路さんにとって伝えることは「社会的責務の問題」だという。「報道記者も消防士も警察官も同じ」「伝えることで助かる命があります。私には、見て見ぬふりはできません」などとツイッターで持論を展開していた。
その後、3月26日には「16日から今日まで南相馬市を取材してきました」とこれまでを振り返った。街の様子は落ち着きつつあるが、物資が足りないことは依然として変わらない。ただし、NHKやTBSなどは南相馬市に取材にきはじめているという。「マスコミの影響力は絶大です。そして、その影響力には重大な使命が課せられています」「頑張れマスコミの記者たち」とエールを送った。