雑誌や本の発行ピンチ インクも「紙」も品不足

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   東北関東大震災の被害は、東日本の太平洋側に生産拠点を持つ製紙メーカー各社にも及んだ。宮城県を中心に生産工場が被災し、再開のメドは立っていない。

   生産体制や流通の障害に加え、都内の湾岸地区に集中している印刷用紙の倉庫の周辺で液状化が発生し、道路が使えない状態になるなど問題が山積している。

全国シェア2割の工場で生産不能

印刷用紙は生産だけでなく保管の問題も発生(写真はイメージ)
印刷用紙は生産だけでなく保管の問題も発生(写真はイメージ)

   大地震は、出版業界を直撃した。集英社は2011年3月17日、人気漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」17号の発売日を、3月28日から4月4日に延期したとウェブサイトで明らかにした。「電力・輸送・資材などの確保が困難」なためとしている。光文社も3月16日、一部雑誌の発売延期を発表。雑誌社94社が加盟する日本雑誌協会は、地震の影響により「いくつかの出版物が発売日に店頭にお届けできない場合もございます」とサイト上で理解を求めている。

   懸念されるのが、出版物に使われる紙の不足だ。印刷用紙を製造する製紙メーカーで、業界大手の日本製紙は宮城県の石巻工場と岩沼工場、福島県の勿来(なこそ)工場が操業不能に陥った。三菱製紙も青森県にある八戸工場が被災し、本格再開は5月中旬にずれこむ模様だ。これらの工場を合わせると、印刷用紙で全国シェアのほぼ2割を占める。日本製紙連合会の篠田和久会長は3月22日にコメントを出し、東北の太平洋側にある工場の被害状況は「全容を把握できるには時間がかかるものと思われます」とする一方、製品の供給は「業界として最大限の対応」を約束した。

   ある専門紙に聞いたところ、新聞用に使う大きなロール状の「巻取紙」はすでに1年分を確保してあるため発行に問題はないとする半面、小冊子を刊行する際に使う「平版」の用紙の不足を心配する。東北地方の太平洋側の物流網が損害を受けたため、首都圏への入荷に支障が出る恐れが十分考えられるからだ。これが今後改善されたとしても、工場の再開が遅れれば品薄が続き、ひいては値上げにつながるのではないかとみている。

   都内の印刷会社に聞くと、被災しなかった北海道の製紙工場から受注する場合でも、岩手や宮城の配送ルートが混乱しているため東北地方の日本海側経由で輸送せざるをえなくなる。そうなれば時間もかかり、コスト増は免れない。

印刷インキ工業連合会は「非常事態」宣言

   用紙の保管の問題もある。印刷用紙は通常、製紙メーカーから代理店、卸業者を経由して印刷会社に納入される。代理店や卸業者が大きなロットで受注していったん倉庫に保管した後、各印刷会社に対して紙の種類やサイズ、枚数などのニーズに対応する。都内近郊の場合、倉庫は江東区の有明に集まっているようだが、今回の地震で倉庫の周辺が液状化に見舞われた。先述の印刷会社によれば、倉庫の中に積んであった在庫用の紙の束が地震で崩れ落ちたため、手作業で使えるかどうかを判別している最中だという。

   さらに深刻なのが、液状化で倉庫周辺の道路事情が悪化したことだ。「今後、何十トンもの荷物を積んだトラックが通れるかどうか不明です」と印刷会社は明かす。

   主要紙や週刊誌をはじめとした大部数の出版物の場合、今回のような不測の事態を見越して事前に相当量の用紙を備蓄しているケースが多く、発行に問題はなさそうだ。広告チラシやポスターなどの印刷物は、現時点では広告そのものが「自粛ムード」のためか発注自体が少ないようで、紙不足には陥っていない。だが需要が復活した場合、工場の生産体制や流通網の整備、倉庫の確保といった点が改善されない場合、品薄や値上げが現実化するかもしれない。

   紙だけでなく、実はインクもピンチだ。主要な生産工場が多数被災。印刷インキ工業連合会は、新聞をはじめとした印刷の主要原料が入手困難な「非常事態」との声明をウェブ上で発表している。現在抱えているインクの在庫が尽きたら「印刷不能」に陥る新聞社もあるようで、海外製品で代替できるインクがあるかを探すところも出てきた。

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