東北関東大震災から約2週間がたち、菅直人首相の情報発信力の弱さを指摘する声が相次いでいる。首相官邸の記者会見場では5度にわたって国民へメッセージを読み上げているものの、1週間にわたって質問には答えない状況が続いており、記者からは「首相は、実際は何をしているのか」「政治的責任を果たしているのか」といった声が相次いでいた。
1週間ぶりに行われた会見の質疑応答でも、今の事態をどのように認識しているかを問われて「まだまだ予断を許す状況には至っていない」と述べるにとどまり、「国難」ともいえる状況下にもかかわらず、国民を勇気付けるメッセージは発せられなかった。
「カンフルブログ」も3月10日最後に更新途絶える
菅首相は地震が起こった2011年3月11日には、発生から約2時間後の17時前、約5分間にわたって
「(原発については)これまでのところ外部への放射性物質等の影響は確認されていない」
などとするコメントを読み上げたが、質疑応答は行われなかった。また、3月12日、13日、15日、18日にも記者会見を開いたが、12日と13日は、メッセージを読み上げただけだ。15日の会見では「2号機はもっと深刻な事態なのではないでしょうか」という唯一の質問に対しても、
「いろんな現象があるので、全体を見て現在対応している。場合によっては、また別の機会に東電の方から報告すると認識している」
と述べるにとどまった。
さらに、震災前には毎日行われていた「ぶらさがり取材」にも2週間にわたって応じておらず、首相がメディアに露出する機会は確実に減っている。官邸の情報発信力強化をうたって解説された「カンフルブログ」も、3月10日を最後に更新が途絶えたままだ。
発信されたメッセージをめぐっても、批判が広がっている。例えば、東京電力による計画停電を了承したことを発表した3月13日の会見では、やや声をうわずらせながら
「果たしてこの危機を私たち日本人が乗り越えていくことができるかどうか、それが一人ひとりすべての日本人に問われている」
と発言。この発言を、3月25日の産経新聞のコラムは
「不安を助長させた」
と評した。また、菅首相が3月18日の会見の冒頭発言で
「私も、この原子力事故に対して決死の覚悟で最大限の努力を尽くしている」
と述べたことに対しては、産経新聞は
「陶酔と自己弁護を繰り返した」
と切り捨てた。