福島原発事故について、朝日新聞が米スリーマイル島と旧ソ連チェルノブイリのケースの中間に当たる「レベル6」に上がったと報じた。土壌汚染はチェルノブイリと同レベルの場所も一部であるとしており、政府による管理区域が必要と指摘する専門家も出てきた。
原発事故は、日に日に予断を許さない状況になっている。しかし、経産省の原子力安全・保安院は、国際原子力機関(IAEA)が定める「国際原子力事象評価尺度(INES)」を2011年3月18日に「レベル5」と発表したままだ。
朝日新聞が朝刊1面トップで報じる
レベル5は、原発の外にリスクが出てくるケースで、1979年にあったスリーマイル島事故と同じだ。
そして、朝日新聞が2011年3月25日付朝刊1面トップで、とうとう原発事故が「大事故」に当たる「レベル6」に達したと報じた。これは、原子力安全委員会が計算した放射線ヨウ素131の放出量を元にしているようだ。
このレベルは、最も深刻な「レベル7」とされた1986年のチェルノブイリに次ぐものだ。米シンクタンクや仏原子力安全局は2011年3月15日の時点で、福島原発事故はレベル6だとしたと報じられており、日本の主要マスコミからもその指摘が出てしまったことになる。
経産省の広報班は、J-CASTニュースの取材に対し、「事態が変わったら、レベルの見直しはありえます。原子力安全委員会の計算も、参考にはします。しかし、具体的に今検討していることはありません」と言う。とはいえ、朝日は、記事の中で、今後放出量の見積もりが進めば、経産省がレベル上げの再検討をする可能性が高いとしている。
朝日の記事によると、同委員会の計算で、事故発生直後の12日から24日までに、放射線ヨウ素が3万~11万テラベクレル放出された。
IAEAの評価尺度では、数千から数万テラベクレル放出されるとレベル6だともされている。チェルノブイリのケースは、約180万テラベクレルだったため、このことを考慮すると、福島原発事故はレベル7とまでは言えないとしている。
「土壌汚染、一部でチェルノブイリと同レベル」
これに対し、京大原子炉実験所の小出裕章助教は、実際はもっと深刻な可能性があると指摘する。
「3万~11万テラベクレルというのは、とても放出量が多いと思います。もしそうなら、むしろ『レベル7』と言った方がいいのではないでしょうか。とてもレベル5であるはずがありませんね」
米シンクタンク「科学国際安全保障研究所(ISIS)」も、すでに2011年3月15日の時点でレベル7の可能性があるとしている。
福島原発事故では、土壌の汚染も、局地的にチェルノブイリと同じレベルの場所があるとの見方を朝日新聞が紹介している。
記事によると、福島県飯舘村では、1平方メートル換算で326万ベクレルのセシウム137が検出された。チェルノブイリでは、55万ベクレル以上は強制移住となったというが、その6倍の濃度だ。別の計算では、飯舘村は1200万ベクレル、20倍との極端な値さえあるという。もしそうなら住民の避難が必要で、場合によっては土壌の入れ替えもしなければならないとしている。
経産省の広報班によると、原子炉等規制法で、セシウムなどのα線を放出しない放射性物質の場合は、1平方メートル当たり4万ベクレルを超えれば、国が放射線管理区域に指定しなければならないことになっている。
前出の小出助教は、「報道がもし事実なら、無人地帯の放射線管理区域にしないといけないでしょう。『原発安定まで最低1か月は必要』と記事にありましたが、事態はもっと悪くなるかもしれません。しかし、こちらも情報が乏しくて判断できずに困っているのですよ」