首都圏から関西方面へ「疎開」をする、子どもを連れた母親が増えているようだ。JR東京駅の新幹線改札口付近では、平日の昼間にもかかわらず、子どもと荷物を抱えた人の姿が多数見られた。
東北関東大震災の発生から2011年3月25日で2週間が経った。それまでの間、福島第1原発の事故が起き、福島県産の一部農作物は出荷制限、摂食制限の指示が政府から出され、都内にある浄水場からは乳児向けの暫定規制値を超える放射線物質が一時検出された。食料品や日用品の品薄もまだまだ続き、被災地の映像を繰り返し見ることで不調を訴える人も出ている。
「余震、停電、放射線物質のことが不安」
こうした状況を不安がる人がいるようだ。
たとえば、読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」には3月16日、神奈川県在住で妊娠2か月の女性が、余震、停電、放射線物質のことが不安で、九州の実家に疎開した方がいいのか悩んでいる、と書き込んだ。これに対しては、「過剰反応では」「心配しすぎだ」という声も少なからずあったが、相談者と同じように妊娠している人は「茨城よりの千葉から香川の実家に移動してきました」「私は近々北陸に帰ろうと思います」「今日実家の三重目指し帰宅」などと書き込んでおり、首都圏から地方への「疎開」を実行にうつした人も出ている。
また、SNS「mixi」に書き込まれた日記にも「昨日から広島の実家にムスメと帰ってます」「水曜日の朝から、京都に疎開しています」「妹が一人甥っ子姪っ子連れて(福岡に)疎開してくる事になった」などの記述がある。その理由として、生後1か月の子どもを抱える女性は、子どもの世話で大変なのに、商品の品薄や繰り返される計画停電が重なり疲労困ぱいだと嘆いている。また、いくつかの書き込みには、暫定規制値を超える水が都内でも検出されたことを不安がる声も出ていた。
切符売り場付近で列をなす子どもを連れた母親たち
東海道・山陽新幹線の始発駅で関西方面への玄関口、東京駅。2011年3月25日正午過ぎ、新幹線改札口付近に行ってみると、ビジネス客にまじって切符売り場付近で列をなしていたのは、小学生以下と思われる子どもを連れた母親たちだった。乳児を抱っこしたり背負ったりした人も見かけた。また、折り畳んだベビーカーをかかえたり、キャスター付き旅行カバンをせわしなく転がしたりする人も。小学生でも高学年や中学生ぐらいの子はほとんど目に付かなかった。父親の姿もあまり見かけなかった。
複数の駅係員に話を聞いたところ、3連休(3月19日~21日)を過ぎたころから、子連れの母親で混み合うようになったという。ふだん平日は、朝から夕方にかけてはビジネス客が多く、席も比較的空いているのが一転した。時間帯によっては、子どもを連れた母親で、関西方面に向かう車内は混雑することもあるそうだ。改札口近くにある土産物店の店員も「とくにここ2~3日は増えた気がする」と話している。