みずほ銀行で起こった大規模なシステム障害への不安が解消されない。2011年3月25日には200万件ともいわれる給与振込が集中する。みずほにとって、ここが正念場であることは間違いないが、3月末は企業の決算期末でもあるので、支払いなどで発生する決済処理がこの後も続くことは確実で予断を許さない。
個人では、月末から月初にかけては電気やガス、水道などの公共料金の支払いや住宅ローンの返済、クレジットカードの支払い代金の引き落としが発生する。利用者は不安を募らせ、手元資金の遣り繰りに頭を痛めている。
「安全宣言」はまだ
3月24日現在、みずほ銀行は「15日以降に発生した振り込み案件の積み残しはすべて処理しました」という。22日夜に判明した5万9417件、約333億円の未処理案件の処理を、23日に処理を完了するはずだったが1169件、46億円分が間に合わず持ち越しとなり、24日昼過ぎに作業を終えた。
3連休中はすべてのATMを止めて作業を進めることで、連休明けの22日には「トラブルを解消したい」と語っていたが、滞っていた振り込みの処理だけで、結局10日もかかった。
しかし、まだ「安全宣言」は出ない。積み残していた振り込み案件は処理したが、「細かな作業が残っている」という。
まずは、「二重入金」だ。みずほによると、「入金漏れが発生すると企業にさらに迷惑がかかるので、自動処理と手作業の両方で、あえて二重に入金処理した件数が約1000件あります。これを元に戻す作業が残っています」と説明する。
また、18日の給与振込で62万人が支障を来たしたことやATMを停止したことで、個人を対象に店頭で10万円まで預金の引き出しに応じる特例措置を実施。利用者は3日間で19万6000件にのぼり、このデータ入力もこれから手作業で行う。
さらにインターネットバンキングや法人向けサービスの一部で処理を残している。
収まらない不安「給料入るのか」
みずほ銀行は、給料日が集中する3月25日に向けて、「とくにシステムに問題があるわけではなく、懸念していることはない」と、期日どおりに入金できるとしている。
とはいえ、利用者の不安はくすぶっている。
あるIT系企業は社員の給与振込の手続きを終えたものの、「現状に不安があるので取り消したい」と申し出たところ、「処理してしまったのでできない」といわれた。しぶしぶ応じたが「間違いなく振り込まれるのか」、経理担当者はいまだに疑心暗鬼だ。
それでなくても多くの人が震災や福島原発の事故で不安を抱えているなか、お金の遣り繰りの心配が加わったことで、「ATMも振り込みも止まって、この時期にかえって不安を煽っている」と、憤りの声は少なくない。
また、銀行関係者からは「トラブルが発生した15日に店頭業務を止めてでもシステムの復旧作業に集中していれば、ここまで混乱は広がらなかった」との声が漏れるほか、事態を悪化させたのは「初動の判断の誤り」との指摘もある。
いずれにしても、みずほの信用力は大きく失墜した。