東京電力の福島第1発電所の事故を受け、政府は暫定基準値を超える放射性物質が検出された野菜などの出荷を控えるように関係自治体に指示した。このため、出荷制限の対象になった地域での風評被害が広がる可能性も指摘されている。
政府は「出荷制限の対象品目を摂取し続けたからといって、直ちに健康に影響を及ぼすものではない」と説明する。にもかかわらず、なぜ出荷を制限するのか。
「なぜ出荷を控えなければならないのか」
政府の原子力災害対策本部(本部長=菅直人首相)が2011年3月21日午後、福島、茨城、栃木、群馬4県の知事に対して、当分の間、ホウレンソウとカキナの出荷を控えるように指示。福島県については、牛の原乳についても出荷を控えるように指示した。
この措置は、原子力災害対策特別措置法に基づいたもの。枝野幸男官房長官は、同日午後の記者会見の中で措置の理由を、
「いわゆる暫定基準値を超える数値が測定されている」
と説明する一方で、検出された放射性物質の量については、
「これは人体に影響を及ぼすような数値ではない」
とも強調した。
これを受けて、
「仮に人体に影響を与えないのであれば、なぜ出荷を控えなければならないのか」
といった声が続出。東京都の猪瀬直樹副知事も、
「菅首相が4県の『出荷制限を指示』しながら『過剰な反応がないよう冷静な対応を』は矛盾している」
と指摘している。
そもそも、この暫定値は、厚生労働省が震災を受けて3月17日に発表したもので、
「これを上回る食品については食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることないよう対応する」
と、方針が定められた。