「町が放射能で汚染されている」。そんなデマが流れたため、福島県の市町村への食品、ガソリンなどの輸送が止まるといった風評被害が出ている。
宇都宮までガソリンを取りに来てほしい
福島県のいわき市の災害対策本部によれば、いわき市の屋内退避対象地域は北部のほんの一部で、放射線量は健康に影響がないレベルになっている。それなのに、物資が突然届かなくなった。それは「町が放射能で汚染されている」というデマが流れ、運送会社などがいわき市に入ることを拒否したためだ。福島県三春町でも同様のことが起こった。三春町は原発事故地から45キロ離れていて、屋内退避対象地域ですらない。しかし、同町の災害対策本部は、
「業者からガソリンが欲しければ宇都宮まで取りに来てほしいと言われた。福島に来るのが本当に嫌みたいな感じでした」
というのだ。
食料、燃料、医薬品などが不足し、いわき市では市外や県外に避難する市民が続出した。残された1人暮らしの老人は買い物に行けず、ボランティアが水や食料を配るなどして飢えを凌ぐ生活が続いた。市は県や国に働きかけ「いわきは安全」であることを国民に呼びかけて欲しいと要望。渡辺敬夫市長はテレビや新聞のインタビューに度々登場しては風評被害に悩んでいることを訴え、枝野幸男官房長官に会見で「いわき市は安全」と発言してもらうまでに漕ぎ着けた。しかし、現状はというと、まだ苦しい状態が続いている。
同市の災害対策本部は、
「枝野官房長官の発言以降、徐々に入って来る物資は増えているものの、十分ではない。放射能の測定値は人体に健康被害を与えるものではないのに、風評被害は怖いものだ」
と深刻だ。
厚生労働省も「過剰反応が原因」
また、福島県から来た宿泊客に対し、放射能が付いているかもしれないという理由から、宿泊を断るホテルや旅館もあるといい、厚生労働省は3月19日、各都道府県を通じ宿泊施設に対し宿泊を拒否しないよう通達を出した。厚生労働省は、
「放射能が怖いという過剰反応がこうした事態を招いているのだろう」
と分析する。