徹底調査:モノが消えた(5)首都圏の 「ガソリン行列」やっと減ったか

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   深刻化していたガソリン不足が解消に向かいつつある。震災で操業をストップしていた製油所が徐々に再開し、石油元売り各社も増産を含め生産体制を強化している。

   都内近郊の給油所でも、長蛇の列は減ってきているようだが、一部ではまだ給油できる量が制限されたり、早い時間に売り切れたりするところが見られ、完全回復にはもう少し時間がかかるとみられる。

首都圏と北関東、東北では地域差

ガソリン不足解消は間もなくか(写真はイメージ)
ガソリン不足解消は間もなくか(写真はイメージ)

   JX日鉱日石エネルギーは2011年3月21日、横浜市にある根岸製油所の稼働を再開した。東北関東大震災の影響で、同社では仙台や鹿島(茨城県)など東日本の製油所がストップしたままだ。根岸の再開で、関東地方を中心にガソリン供給に一定のメドがつきそうだ。コスモ石油では、地震で火災に見舞われた千葉県市原市の製油所での鎮火を確認したと発表。早期の復旧を目指すと同時に、西日本の3か所の製油所で石油製品の増産に入る。エクソンモービル・ジャパンも、傘下の東燃ゼネラル石油の川崎工場や、極東石油工業千葉製油所などでフル生産体制だという。

   ツイッターを見ると、都内や横浜、千葉などで「ガソリンスタンド行列なし」「一台も並ばずに給油可能だった」など事態が好転している様子がうかがえる。一方で、北関東や東北では、「知り合いが16時間並んで入れられなかった」といった投稿が今も見られる。ガソリンの供給事情も今のところ、地域差があるようだ。

   3月22日午後、都心のガソリンスタンドを訪ねてみた。行列はできていないが、1台が給油を終えて出ていくとすぐに1台入ってきて、常に満車の状態が続く。店員に聞くと、1台あたりのガソリン販売量は制限していないものの、夕方前の段階で「ハイオクも含めてすべて売り切れそうです」と話した。「明日(23日)の分は確保してあります」と説明する一方、前日の夜にならないとガソリンが入荷するか分からないという。

首都圏「3月中には相当解消される」

   石油元売り大手の出光興産IR・広報室に聞くと、3月19~21日の3連休前まで、同社には「都内近郊でどこの給油所が開いているか」との問い合わせが頻繁に寄せられていたという。だが休みが明けてから電話の件数が目に見えて減ったことから、ガソリンの需給ひっ迫も「3連休がピークだった」と感じているようだ。実際に営業を再開した給油所が増えており、首都圏に限れば、「現在ご不便をおかけしていますが、3月中には相当解消されると思います」という。

   被災地周辺への供給も、改善へと向かいそうだ。被災した塩釜港(宮城県)が一部復旧し、石油タンカーが入港できるようになった。出光は21日、同港でガソリン1050キロリットル、灯油470キロリットル、軽油490キロリットルを荷揚げ。すでに稼働を再開している同社塩釜油槽所からタンクローリーで宮城県や岩手県南部、福島県の給油所へ輸送を始めた。22日にも塩釜港にタンカーが入港し、石油製品は「今後もコンスタントに入荷する予定」(出光興産IR・広報室)だ。震災の影響で、これまでは新潟や秋田の製油所からタンクローリーで十数時間かけて運搬してきたが、塩釜港の利用が可能になったことで宮城県内を中心に周辺地域の給油所への輸送効率が格段にアップ。「ガソリン切れ」で休業していた給油所も徐々に再開してきた。

   政府も供給増を後押しする。経済産業省は3月21日、石油元売り会社などに義務付けている石油製品の法定備蓄について、45日分にまで引き下げると発表した。石油備蓄法による備蓄量は70日分だが、同省は3月14日にも「67日分」に引き下げており、今回はさらに備蓄の取り崩しを拡大する処置となる。

   現時点では、地震前のような「安定供給」までは回復していないが、最悪の危機は脱したようにみえる。

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