都内周辺の小売店で「モノ不足」が続いているが、特に品薄な商品の一つに納豆がある。産地の中心である北関東で、地震のため工場が操業の一時停止を余儀なくされたり、配送網が打撃を受けたりしたためと見られる。
道路は徐々に復旧しつつあり、都内スーパーにも納豆が入荷するようになってはいるが、あっという間に売り切れてしまうのが現状のようだ。
牛丼店の朝定食でも「切らしています」
「スーパーに米や水などが戻り始めたな。納豆はいまだになかったけど…」
「納豆が消えた。店が多い新宿界隈、どの店行っても納豆だけはない」
「スーパーを2か所回ったけど、納豆は買えず」
ツイッターには、納豆が買えない「嘆き」が続々と投稿されている。東北関東大震災以降、コメや牛乳などとならんで納豆も品薄が解消されないままだ。
J-CASTニュース編集部でも2011年3月19日~21日の3連休の間、都内や近郊のスーパーを中心に納豆の入荷状況を調べてみた。東京・大田区では連日、売り場が「カラ」の状態。千葉県松戸市でも、大手チェーンのスーパー3軒でことごとく納豆が売り切れていた。
神奈川県川崎市のスーパーに立ち寄ると、やはり売り場には納豆がひとつも見当たらない。空っぽの販売ケースには、「お1人様1パック限定」という札がかかっていた。入荷はしているものの、買い物客が「待ってました」とばかりに次々と購入するためにすぐなくなってしまうようだ。
連休中に、牛丼チェーン店で「朝定食」を頼んでみた。通常ならご飯やみそ汁、目玉焼きと一緒に納豆もついてくる。ところが店員が「今、納豆を切らしていまして」と、別の小皿を選んでほしいと促してきた。一部の飲食店にも納豆が入っていないことをうかがわせる。
東北道、常磐道は徐々に復旧
ようやく納豆を見つけたのは、都心のスーパーだった。2種類の納豆が3パックずつ残っている。店員によると、茨城をはじめ納豆生産の中心地が被災し、工場がストップしたり物流に影響したりして、入荷がままならないそうだ。ようやく店に届いても「すぐに売れてしまう」と話す。その近所のスーパーにも納豆があった。「土曜日(3月19日)あたりから少しずつ入ってきました」という。販売されていた納豆のラベルを見ると、すべて栃木県宇都宮市のメーカーのものだった。
納豆メーカー最大手で、茨城県小美玉市にあるタカノフーズは、ウェブサイト上に「東北・関東地区の納豆及び豆腐工場が被災しており、復旧作業をすすめております」とある。生産工場や物流センターは茨城に多く、関東方面への出荷はここが拠点になっているようだ。同じく大手のミツカンも、「関東エリアの工場の一部で被害が発生」とサイトで報告。栃木市や群馬県館林市に工場がある。メーカーの生産体制が厳しい状態なのは事実と見られる。
地震発生以後、東日本の交通の大動脈である東北自動車道や常磐自動車道をはじめ、北関東や東北へ向かう国道も大きな被害を受けた。多くの地域で通行止めが続出したが、それでも3月19日には東北道が浦和から宇都宮まで、常磐道も21日10時に水戸から福島県の「いわき中央インターチェンジ」までの通行規制が解除され、一般車両も通行できるようになった。都内と北関東、東北を結ぶ道路の復旧が進んで配送網が確保され、工場の操業も本格的に再開すれば、納豆の品薄も解消に向かう可能性はある。