米政府判断の科学的根拠に疑問の声も
一方、枝野幸男官房長官は3月18日午後の会見で、米国の避難勧告について「海外にいる自国民保護という観点からは、一般的に求められている水準よりも、より保守的な水準で様々な指示をするというのが、それぞれの政府の当然の対応だと思っている」と、従来の見解を繰り返した。日本政府が指示している現在の避難範囲については「私どもが把握している専門家の意見を含めたデータの中で適切と思われる退避に関する指示を出している」とし、問題ないとの考えを示した。
米政府の判断に対しては、米国内から異論も挙がっている。米国の原発業界には、「80キロ圏内避難」について「科学的根拠への疑問」の声があるという。米ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が3月17日付で伝えた。同紙によると、米原子力エネルギー協会のスポークスマンが語った。スポークスマンは、日本の「20キロ圏内退避」の判断について「健康面への影響を最小限に抑える点で十分と考えられる」と評価した。
炉心溶融(メルトダウン)が発生した1979年の米スリーマイル島事故の際には、約16キロ圏内の住民に屋内待避措置がとられた。1986年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故は、最終的に約30キロ圏内の住民が強制的に避難させられた。チェルノブイリ事故の際は、北ヨーロッパや西ヨーロッパへも影響し、乳製品や野菜などの放射能汚染問題が発生した。