円急騰76円台 阪神大震災時の「シナリオ」再来するのか

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   東京外国為替市場のドル円相場は2011年3月17日早朝に円が急騰し、一時1ドル76円25銭まで上昇。1995年4月19日に付けた史上最高値79円75銭を更新した。

   3月11日に起こった東北関東大震災とその後の福島第1原子力発電所の事故を受けて、週明けの14日から円高の影がチラつきながらも81円~82円前半で推移していたが、16日のニューヨーク外国為替市場で80円を割り込んで1ドル79円後半を付けていた。

FX投資家の影響が大きかった

   ドル円相場が1ドル80円を割り込んだことで、政府・日銀は円高を抑えにかかった。そもそも3月は決算月のため、多くの企業がドルを円に換える動きを強める。その動きに、今回の震災の影響を加味して、日銀が短期金融市場に潤沢に資金を供給。ドル円相場に起こった急激な円高の動きを封じ込めようとしていた。

   一方、政府は野田佳彦財務相や与謝野馨経済財政担当相らが、生命保険会社や損害保険会社が保険金支払いのためにドル資産を円に換えているとの観測が行き過ぎであることを強調。投機的な思惑が先行しての円高であると繰り返した。

   大手生命保険の役員も、「現預金やコールローンなどで円は潤沢にある」と為替市場をけん制。日本経団連の米倉弘昌会長も政府・日銀に対して、「為替介入の実施を含め断固とした対応を講じてほしい」とコメントした。

   3月17日17時のドル円相場は、前日比1円77銭下落して79円15~18銭の円高。外為どっとコム総研シニア・ストラテジストの岡田剛志氏は同日の相場動向について、「早朝からポジションを閉じる(必要以上に証拠金が棄損しないように強制的にロスカットする)動きが相次ぎました。そのため、円を買い戻す動きが強まったことが急激な円高を招いたと考えています」と話し、FX投資家の動きが大きかったとみている。

1995年とは「状況違う」との見方

   1ドル76円と過去最高値を更新したドル円相場だが、これまでの最高値は阪神・淡路大震災が起こった1995年に記録している。

   それもあって阪神・淡路大震災と比べられているが、「震災後の円高シナリオ」は繰り返されるのだろうか――。

   前出の外為どっとコム総研の岡田氏は、「95年の円高要因は、震災というよりも政治的な側面があります」と、今回と状況が違うという。当時は日米構造協議の交渉中で、日本の自動車輸出がヤリ玉にあげられていた。その交渉の最中に「円が駆け引きの道具に使われたために起こった」と振り返る。

   第一生命経済研究所・主席エコノミストの嶌峰義清氏も「過度な円高リスクは小さい」とみている。「いまは円が上昇しているというよりも、高金利通貨が売られている状況。相場の乱高下は、そういった需給の動きがハデに表れているため」と説明する。

   とはいえ、「米国金利は3月17日時点で3.5%台から3.2%台に下落。そのために買っていたドルを手放す動きが加速しました。当面は73~75円が節目とみていますが、震災が世界経済にさらに悪影響を及ぼすことになれば、過去と比べようもない水準になる可能性もあります」と、岡田氏は話す。

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