東北関東大震災ではインターネットが情報の早さや安否の確認に威力を発揮したが、その一方でデマも流れた。メールの転送機能を使い、不特定多数の人に文書が回覧されてしまうチェーンメールや、ツイッターのリツイート機能で誤った情報が拡散した。
埼玉県の「水道水風評」県が否定
千葉コスモ石油の火災事故があった2011年3月11日、「コスモ石油二次災害防止情報」というタイトルのチェーンメールがまわった。本文には、この爆発により有害物質が雲などに付着し、雨といっしょに降るという内容だったが、同社は翌12日、「このような事実はない」と説明した。発表によると、タンクに貯蔵されていたのは「LPガス」で、燃焼により発生した大気が人体へ及ぼす影響は非常に少ない、としている。
また、埼玉県は3月16日、大地震にともなった原発事故で、埼玉県の水道水が放射性物質に汚染されたという風評が流れたことに対して、「埼玉県の水道水は安全です」とwebサイトで明かした。埼玉県で飲まれる河川水については、荒川水系、利根川水系など県内や群馬県、栃木県などを流れているもので、福島県から流れているものではなく、直接汚染される可能性はないとしている。
「あわてて転送しないように」
さらには、ヨウ素を含む食品を食べたり、うがい薬を飲んだりすると、放射能汚染を防げるなどというデマも飛び交ったが、厚生労働省、放射線医学総合研究所は3月14日、「ヨウ素を含む消毒液などを飲んではいけません」と呼びかけた。
放射線医学総合研究所の発表によると、大量の放射性ヨウ素が体内に入った場合、内服薬「安定ヨウ素剤」を医師が処方することはあるが、市販品(ヨードチンキ、うがい薬、のどスプレー、消毒用せっけん、ルゴール液など)については、内服薬ではないためにヨウ素以外の成分も含まれており、体に有害な作用を及ぼす可能性のある物質も含まれている。飲んだとしても、ヨウ素含有量が少なく、放射性ヨウ素が集まるのを抑制する効果がない、と説明している。
ツイッターで拡散されたデマには、こういうものもあった。東京大学に合格したという親戚が宮城県にいるが、被災したため入学に必要な提出期限に間に合わない。期日の延期について大学側に問い合わせたら、「入学資格取り消し」と言われたというのだ。
これに対しては、東京大学が3月13日、入学手続きの期間は3月12日~15日としているが、地震により手続きに支障のある場合は、入試事務室への連絡を呼びかけたうえで、「今回の手続において、合格者本人の意志を確認せずに入学の資格を取り消すようなことはありません」とホームページで発表した。
総務省や迷惑メール相談センターによると、チェーンメールの場合、件名や本文中に「厚生労働省から」「電力会社から」「マスコミに勤めている人から」「自衛隊から」などの記載があるものを信憑性があると思い込み、善意で転送するケースがあるようだ。受け取ったメールは内容が正しいかどうか確認し、善意悪意に関わらず、慌てて転送しないよう呼びかけている。また、ツイッターの場合は、地震情報の発信にはハッシュタグ「#jishin」が推奨されており、検索する時もこれを入れると、関連情報が表示される。